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新春企画『機動戦士ガンダム サンダーボルト』描下しイラストプレゼント!太田垣康男先生インタビュー(3/3)

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コミスン新春特別企画、太田垣康男先生ロングインタビュー。最終回となる今回は、太田垣作品のビジュアルに影響を与えた作品や、『サンダーボルト』そしてこれからの執筆活動についての思いを伺っています。


<太田垣康男先生インタビュー(1) (2)



――『機動戦士ガンダム サンダーボルト』はもちろんですが、『MOONLIGHT MILE』でも魅力的なSFのビジュアルを描かれています。太田垣先生が、デザイン面で特に影響を受けた作品はありますか?


やはり『2001年宇宙の旅』は何度も観ましたね。あのデザインラインを研究するのにかなり時間を使いました。それから、80年代にシド・ミードが描いたデザインラインも。自分はその世代だったので、『ブレードランナー』から『2010年』から洋書を取り寄せて研究しました。


コマ_2001年

©創通・サンライズ



――奇しくもシド・ミードは後にガンダムをデザインすることになりますが......


シド・ミードの合理的な工業デザインをガンダムの神話世界みたいなところに取り入れるのは水と油のようなところがあるので難しい気はしましたが、デザイン的には素晴らしいと思います。あそこまで分解してもガンダムに見えるデザインというのは、すごいセンスですよね。


――『∀ガンダム』のデザインは、ある意味ガンダムを好きすぎてはできない仕事だったと思います。


ぶっ壊すには勇気が必要ですからね。でも、愛情が強いとどうしても守ろうとしてしまうので見習わないといけないと思います。そのままでは単なる焼き直しになってしまいますから、どこかを壊して新しく作り直すことをやらないと、今この時代に描く意味がないですから。「ガンダムの壊すべきところはどこなのか」というのは連載を続けながらずっと考えています。


――「ガンダムを壊す」という言葉は、ガンダムに関わる人としては富野監督以外からはなかなか聞けないですね。


恐れ多い(笑) その意味で『サンダーボルト』はすごく幸福なスタンスで始められた作品だと思うんです。それこそ、ファーストガンダムのテレビシリーズが注目されていないから自由があったように、小学館の「スペリオール」という特殊な舞台で始まるガンダムなので、あまり"縛り"がなかったんですよね。最初に「ガンダムの歴史に残らなくてもいいので、自由にやらせてほしい」と言ったら、太田垣版ということで好きにやってもいいよと言ってもらえて。その代わり、アニメ化もガンプラ化も難しいんだろうな......って(笑)。


太田垣先生写真3


――宇宙世紀年表のここの部分をやりましょう、というようなアプローチではなかったと。


いわゆる"正史"とは少し違うけど、それでもいいならという扱いで(笑) そういう端っこのほうで注目されない状態から始められたことで、かえって自由に描けたというのと、それなら保身に走る必要もないので、好きにぶっ壊しちゃえと思ってスタートできたのがよかったと思います。そのスタンスもファーストガンダムの情況にシンクロしていて、自分としては満足しています。


――しかし、この12月には遂に『サンダーボルト』版のモビルスーツのガンプラ化も実現することになりました。


結果オーライですが、本当に有難いことです。ここまできたら、どこまで祭りが大きくなるか挑戦したいです。もちろんファンの後押しあってのことですけれど、連載の第1回から読んでくれている人達が、どこまでたどりついたら喜んでくれるかなと思っていて。漫画はどうしても若い人達の文化でもあるので、青年誌の作品がそこまでムーブメントになったりしないんですよね。ドラマ化されたりしても、「これは自分達の作品だ」という親近感をもって見てくれることまでは少なくて。でも、サンダーボルトはもしかしたら30、40代の人にとって自分の世代のものとして愛着をもってもらえるんじゃないかと思っています。


1311-635115


――先日のガンプラEXPO2013で行われた『サンダーボルト』のトークイベントでも、映像化について触れられていましたね。


言うのはタダだし 、野望は語っていたらいつか色々な人が助けてくれて、達成できるような気がするので(笑) それで、ファーストガンダムの時と同じように、自分達が応援して育てたみたいな形で実現してくれたら、ようやく祭りが一段落するかなと思っています。


――お話を伺っていると「世代の作品」というのがひとつのキーワードになっているように思いますが、いまの若い世代の人達の漫画についてはどうですか。


『進撃の巨人』を読んだ時に、「あそこで斬り殺されている巨人は俺たちの世代だ」って思ったんですよ。なので、同世代の人が面白がっているのを見ると、斬り殺されているのが俺達なんだぞ!、って(笑)。だから『進撃の巨人』憎し、負けるものか! って。


――『進撃の巨人』は若いファンから熱烈に支持をされていますよね。


自分達が若かった時もこういう熱だったんだなと思いますね。僕らの世代から見ると、ここまで凄い反響があるのか......、 という部分もあるんだけど、自分の若い頃にも、上の世代はガンダムを見て同じことを思っていた、その繰り返しだと思います。
巨人を倒すときに、後ろから脊髄を斬るじゃないですか。「後ろからかー!」と思って。僕の感覚とは違うのですが、この年齢になって若い人の真似をして作品は作れないので。僕なりに破壊衝動とか性衝動で漫画を描く時期は過ぎてしまったんですよね。自分にとっては、30代に『MOONLIGHT MILE』を衝動で描いたという時期があったので、それを過ぎてから何をベースに漫画を描くのかとなると、せっかく年輪を重ねて生きてきたつもりなので、その蓄積でどこまで描けるかが、これからの自分のベースだと思っていますね。


コマ_少年兵


――『ガンダム』の主人公も、テレビシリーズでは10代の少年だったりしますけれど、『サンダーボルト』では大人が中心の物語になっているのは、そのためですか。


そこは、アニメで定番になっているものはあえて壊したいと思っているので。なんで15歳でないといけないのとか、青い正義を語ったりする必要があるのかと。どこを壊せばいいのかというときに、定番の部分にはまず逆らっていこう、でも『機動戦士ガンダム』の大本にあったテーマやメッセージからは外れないでおこうと考えていて。


――連邦軍とジオン公国軍の描き方もテレビシリーズに比べてフラットですよね。


アニメだと、どうしても主人公が所属する連邦サイドは正義の味方みたいな固定概念が入ってしまうじゃないですか。連邦にしろジオン公国にしろ単なる国家ですから、いいも悪いもないはずなんですよ。僕は漫画の中でイデオロギーを語ることに意味はないと思っているんです。普通に生きている人達にとっては、国家と戦争はそれこそが一番の暴力で、巻き込まれたときにどう振る舞うのが生き残る最良の方法なのかを描きたいんですよね。


コマ_生き残る


だから、反戦でもないです。戦争は必ず起こるもので、この世からなくならないと思っているので、どう対応するかが一番大事なんですよね。でも今の日本では、あまりそういう観点で物事を考える人がいなくて。「戦争反対」「無ければいい」という主張が一番正しくて、戦争が起こる前提で物事を考えるのは好戦的な人間であり、悪い人だと思われてしまう。でもそれはすごく視野が狭い考え方ですし、逆に言えば歴史認識が足りないんじゃないかと思います。


――実際、ネットを見ていると、最近の国内外の情勢に対しても分かりやすい対立構図でとらえていい悪いみたいな反応が多かったりしますよね。


でも、30代、40代の一般の読者にはそういう社会情勢や歴史認識もある程度は蓄積されているはずですよね。その人達の常識から見てサンダーボルトがリアルに見えるかどうかが大切だと思っています。テレビシリーズの『ガンダム』だと、中高生がメインのターゲットですけど、僕はある程度経験と知識を積んだ大人に向けて描いているので、彼らがリアルと思える世界観を描いているのが『サンダーボルト』の特徴なのかなと。


コマ_ジオン


――ファーストガンダムが当時のロボットアニメから一線を画すことになったのも、連邦だけではなくジオン側にも大義があるように描かれていたことが一つの要因でした。


連邦とジオン公国の戦いは民主主義と独裁政権の戦いですけれど、僕はどっちも大して変わらないと思っているんです。民主主義のほうが素晴らしいとか、独裁政権のほうがいい、というのは何が基準なんだろうかと。アラブの格言に「無政府状態より独裁のほうがマシ」というのがあるんですよね。それは情況によって変わりますし、自分はいまこうして漫画を描けている時点で、現代日本の政治体制は、完璧ではないけれど素晴らしいと思っていますし。これから先100年、200年と時代が続くごとに少しずつでもいい社会になっていくと期待はしたいんですよ。


<2013年12月小社会議室にて収録>



太田垣康男先生描き下ろしイラストプレゼント!(終了しました)


太田垣先生サイン入りイラスト写真


太田垣康男先生が、今回のコミスン企画のために描き下ろしたイラストをプリントしたものに、直筆サインを入れて抽選で3名の方にプレゼントします!応募方法は、コミスンのTwitterアカウント(@comic_sn)をフォローした上で、このページの「ツイート」ボタンからTwitterに投稿することだけです。当選者には後日Twitterのダイレクトメッセージでお知らせします。ここでしか手に入らない限定イラスト、こぞって応募ください!



(コミスン編集チーム 平岩真輔)

【2014/01/ 3】

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