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【新連載】『フイチン再見!』単行本第4集発売記念・奈良美智さんインタビュー!◆私の『フイチン再見!』第1回

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村上もとか『フイチン再見!』単行本第4集発売記念 応援企画! 連載インタビュー始動!


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第1回 奈良美智


日本を代表する現代美術家・奈良美智。その代表的イメージである挑戦的な眼差しの少女の絵を、皆さんも一度はご覧になったことがあるだろう。世界に通じる少女のイメージを持つ奈良は、39歳の時、上田としこの『フイチンさん』に出会った。時代を超える衝撃として。



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この線とヒューマニズムは時代を超える


 (『フイチン再見!』単行本第1集を開いて)連載第1回の物語が、ちょうど僕の生まれた年から始まってるんですよね。1959年、村上さんは当時7歳で少し年上。だから僕はリアルタイムで上田としこさんの『フイチンさん』は読んでないんですよ。最初に出会ったのは98年。東京都現代美術館で【マンガの時代展 ―手塚治虫からエヴァンゲリオンまで―】という展覧会があって、日本の色んな漫画家の原画が紹介されていた。そこに僕も美術界から参加していたんですけど、その中に"この時代にこんな線を引けるのか!"っていうぐらいモダンな線で描かれてる絵があって、それが『フイチンさん』だった。


 とにかく線が美術的に群を抜いていて、時代を超えてるような。あまり上手く言えないけど、ロダンというか、彫刻家みたいな線なんですよね。あれは純粋な漫画の線だけからだと出てこないですよ。その秘密がずっと気になってたんですけど、ある時『フイチン再見!』の連載を読んで"ああ、こうやって美術の勉強を本格的にやっていたからなのか"って。そして同時に初めて作者の上田としこさんの人物像も分かって、線だけではなく、満州で育ったあの時代の生活、感性......そういった部分もどんどん好きになっちゃった。


 漫画の歴史で語られる、手塚治虫さんとか石ノ森章太郎さんのヒューマニズムって、アメリカ映画とかSFの影響を凄く受けていて、アメリカ的なヒューマニズムなんですよね。ところが『フイチンさん』にある上田としこのヒューマニズムっていうのは少し違う。同じ時期に活躍した長谷川町子さんの『サザエさん』みたく和的、ではあるんだけど、お茶の間的ではない。ロシア人も中国人も日本人も、偏見を持つ前の子供の世界。感性でいくと今のグローバルな感性に近いものを感じる。僕は20歳になりたての時、海外を放浪したんです。学費を使っちゃったんで、学校辞めなきゃいけなくなって(笑)。『地球の歩き方』がまだヨーロッパ全部で1冊、厚さ2cmだった頃です。言葉ができない状態で、まだ大人になりきれてない状況で海外を放浪したことがある人だったら、どこかで人種とか関係なく、偏見を持つ前の子供に助けられることがあると思うんですよ。僕もそうだった。強いて言えば、その時のことを『フイチン再見!』で描かれた、上田としこさんのヒューマニズムに近い感覚として思い出すんですよね。


 まさにもうひとつの漫画史というか。今こそ読まれる漫画、人物だと思います。でも改めて読んでみると、"気が強い人だったんだろうな"って気がしますね。僕もちょっと怒られてみたい(笑)。



《プロフィール》
奈良美智 YOSHITOMO NARA
1959年生青森県弘前市出身。81年、愛知県立芸術大学に入学。同大学大学院修士課程終了後、88年に渡独。国立デュッセルドルフ芸術アカデミーに入学する。2000年の帰国までの間に日本やヨーロッパでの活躍から注目を集め、帰国翌年の個展により美術界を席巻する。その後日本を代表する現代美術家として活躍し、東京都現代美術館・ニューヨーク近代美術館など、国内外の多くの美術館に作品が収蔵されている。



『フイチン再見!』第4集は1月30日発売!



(ビッグコミックオリジナル編集部 写真/鷲崎浩太郎)

【2015/01/25】

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