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『機動戦士ガンダムサンダーボルト』連載100回記念! 太田垣康男インタビュー「100回目はフルカラーだから(^^)」

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「ビッグコミックスペリオール」4号で連載100回を迎えた『機動戦士ガンダム サンダーボルト』。この節目に、作者・太田垣康男氏は何を思うのか――。
連載開始からの様々な出来事を振り返りつつ、自身の制作スタイルの変化や、作品のこれからについて、コミスンが直撃インタビューしました!!


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異例の24ページフルカラー掲載! スペリオール4号『機動戦士ガンダムサンダーボルト』連載100回記念!! 関係者コメントで振り返る連載100回までの歩み。



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――「スペリオール」4号で『機動戦士ガンダム サンダーボルト』が連載100回を迎えましたが、今の心境はいかがですか。


まさかtwitterでの落書きから始まったものが、ここまで大きくなるとは思わなかったので、「行き当たりばったりで始めた作品のほうがなぜか長編になる」という漫画界のジンクスはまだ生きているな...と思いました(笑)。


――連載100回ともなると、途中で苦しい時期もあったりしたのではないかと思いますが。


初めて苦しいと思ったのは、単行本第4集を始める時ですね。もともと全3巻で終わる予定でその後の展開を全く想定していなかったので。先の展開をひねり出すまで時間がなかったこともあって、そこが一番苦しかったですね。


――その頃から、制作体制も大きく変えられていますよね。


連載を続けるだけでなく、それまで月1で載っていたものを隔週にしてくれという話も来たので、どうしようかと思いました。それまで一人で描いていた個人商店みたいな状態から、スタッフを集めて会社化したんです。その頃に子供も生まれたので、公私ともどもバタバタでしたね。やはり人間、追いつめられるとアイデアが出るので(笑)、いま上手くいっている様に見えるのは、その当時すごく追いつめられていたということだと思います。


――漫画の外でもこれまで色々な展開がありましたが、一番驚いたことは?


やはりガンプラになった時が一番、驚きましたね。連載当初は、サンライズからもバンダイからもそういうことは無いですよと言われていましたから。最初の段階でデザインに手を加えたり、自分なりのアレンジを入れるといった自由をいただく代わりに、ガンプラ化やアニメ化のハードルが高くなるのですが、単行本第1集の反響がとても大きく、それが後押しもあってガンプラも発売されることになりました。


――実際に『サンダーボルト』版のガンプラを手にした時はどのような感じでしたか。


ガンプラが店頭に並んだ時には単行本が並ぶのとはまた違うボリューム感があって、「すげえなあ」という感じがしましたね。なにしろガンプラは箱が大きいので、ダイレクトに自分の描いたものがどんどん世の中に広がっていくという感触がして、本当に感慨深いものがありました。


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――本誌や帯でも「奇跡のアニメ化!」と謳っていたアニメ化についてはいかがでしょう。


アニメの話が来た時には、正直、不安もあったんです。果たして自分がマンガでやっているような尖った作品を、サンライズさんが腹を据えて作ってくれるのかと。それが、ふたを開けてみたら自分の期待以上のものが出てきたので、これも作家冥利に尽きる嬉しい経験でしたね。


――むしろアニメではできないガンダムを漫画でやってやるんだという気持ちすらありましたよね。


「こんなのアニメじゃできないだろう」という思いもあったので、それを本当にアニメでやられちゃうとちょっと悔しいんですよね(笑)。音がついて動き始めたら漫画より良く見えるのは当然なので、そこからは、どうやってアニメに負けないように漫画の魅力を読者に伝えるかを考える様になりました。声優さんの声のイメージや、メカの動きのイメージが読者にあるので、そのテンポやキャラクターのパッションが漫画からも伝わるようにしなければいけない。自分が発信したものをアニメが増幅して、さらにその上に乗って自分を高めていかなければならないというのは、慣れるまで大変でした。


――ある意味、自分から挑戦状を叩きつけたようなものですからね。


作者としては、まだアニメには負けてないよという気持ちはありますが、お互い負けずにやり返しているようなものなので、いいライバル関係になれればと思いますけど......困ったもんですよね(笑)。


――アニメ化したことで、漫画の作り方に何か変化はありましたか?


アニメは観始めると60分、90分をいっきに観るので、とてもボリューム感があるんですよ。漫画で単行本を1冊読み切った時に、一本の良質なドラマを観たような読み応え感がないと多分アニメに負けてしまうと思ったんです。第7集までは毎回1話ずつネームを描くという連載スタイルの作り方だったのですが、どうしてもブツ切れ感があるので、一度、単行本1冊分まるまるネームを切ってみる事を第8集でやってみたんです。それで新しい達成感があったので、それ以後は基本的にそのやり方で1冊分ずつネームを描くスタイルに変わっています。


――確かに第8集から第9集にかけてのスパルタンがリグを急襲する展開はすごくドラマチックな盛り上がりを感じました。


もちろん話数の切れ目にも山を作らないといけないのですが、そこもテレビドラマ的にCMが入るところだと考える様にしました。面白いドラマはちゃんとCMでも引きがありますよね。こんな作り方は、新人だと絶対やらせてもらえない、ある程度読者の支持があって連載が安定しているからこそなので、これからも読者の皆さん応援よろしくお願いします。


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――最近ではそこからさらに試行錯誤を重ねて、作画スタイルにも変わってきていますよね。


ついにモビルスーツ作画の3DCG化に着手し始めました。それまで武器やちょっとした物は3DCGで作っていましたが、関節を仕込んで演技をさせるようなモデルを自分独りで作成するのは難しかったんです。会社設立から3年を経て、スタッフの技量も上がってきたのでようやくモビルスーツ1体をまるまる3DCGで作成して、演技をつけてレンダリングするところまで来ましたね。


――すでに原稿の中に3DCGで描かれたモビルスーツは登場しているんですか?


95話でフレーム状態のサイコ・ザクが登場しますが、あれはフルCGです。ただ、3DCGをレンダリングしただけだとどうしても手描き感が足りず、これまでの作画の雰囲気と変わってしまうので、レンダリング後にペンでタッチを加えないといけないのですが、これはまだ技術的に私にしかできないので、そのへんが悩ましいところですね。


――レンダリングした線に漫画原稿としての魅力を付与する作業が必要になるわけですね。


ペンタッチというのは、漫画の手描きの味を表現する一番重要なものなのですが、これが一番の秘伝のタレみたいなものなので、なかなか若い人に伝承できないんですよね。その味付けがあるからこそ、『サンダーボルト』がガンダムファンやロボットマニア以外の人にも読んでもらえる作品になっているので、次の課題はそこだと思っています。


――しばらくお休み中ですが、eBigComic4で連載している『外伝』についてはいかがですか。


外伝は、長編漫画を描く身として本当にありがたい存在なんです。どうしても本編の物語を進めないといけないので、発想したけれど描く暇がないとか、入れようがないとかで泣く泣く切り落とした小ネタがたくさんあるんですよ。普通ならそういうネタはお蔵入りでそのまま描かずに終わることが多いのですが、『外伝』のおかげで『サンダーボルト』を描く時に浮かんだ他の物語や、本編を補完したり広げたりするものを描くチャンスをもらえました。


――『サンダーボルト』の世界の中で毎回、趣向を変えて描かれる物語に唸らされますが、本編登場キャラクターの違った面が見られるのも嬉しいです。


『外伝』を描きながら『サンダーボルト』の世界がより膨らんだり、厚みができていくのを感じていたし、なにより作家にとっては短編を描くチャンスがありがたいんです。どこかに短編を描けなくなったら漫画家終わりだなという意識があるので、自分はまだいけるんだという基礎体力の確認のためにも、短編はやっていきたいですね。


――『外伝』といえばホビージャパン誌とのコラボで、プロモデラーによる作例を作画に使っているのも特徴です。


アニメから入り、ガンプラブームでよりガンダムの世界が好きになって、「ホビージャパン」もずっと愛読者として追いかけていた雑誌なので、その「ホビージャパン」と面白いことができるというのは1ファンとして名誉なことです。モデラ―さんの作例も、普通ならショーケースのガラス越しに眺めるしかできないものを、手に取って動かして撮影できるというのは、もう役得ですね(笑)。


――「ホビージャパン」誌では、ガンプラ改造コンテスト「オラザク選手権」の審査員までやっていますよね。


審査員も、毎回自分でいいのかって。それまでは誌面に載った小さな写真でしか見られなかったので、細かい部分がどう作られているかまでわからなかったんですけれど、審査に行くと全部の応募作品が大判の写真で見られて、毎回、選考に半日くらいはかかるんですけれど時間が足りないと思っていて、本当ならお弁当持参で丸1日やりたいですね(笑)。


――あれだけ大量の応募作に触れると、自分も負けてられないぞ! みたいな気持ちに。


毎回、新しいデザインの方向性やアイデアがあって刺激を受けているので、そういうエッセンスや発想に自分もついていけるようにならなければと思いますね。審査に加わってからの数年でも、模型業界の流行が変化しているので、最近はこういう方向に来たのか! というのを見るだけでもガンプラファンとしては楽しいです。


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――連載第100回は、まさかのフルカラー24ページ掲載という大判振る舞いになりましたが...。


スタッフに「100回目はフルカラーだから」と言っても、何を言っているのかわからなかったみたいで、反応してくれなかったですね(笑)。担当編集と100回目だから読者プレゼントとか何か企画をしようと話していて、表紙&巻頭カラーだけだと普通すぎてあまりおめでたい感じもしないので、なにかパーッとするものがないかなと思って口がすべっちゃったんです。「じゃあ24ページフルカラー、なんちゃって」みたいな感じで言ったら、担当さんも「またまたー」とか言いながらそのまま編集長に話をもっていって、それが通っちゃったんですよね。しばらく後に「決まりました!」と言われて、「何がですか?」って(笑)。しかもそれが年末の一番忙しい時期に......。


――そもそも中綴じの漫画雑誌で24ページフルカラー掲載というのは、ありえない発想ですよね。


「スペリオール」どうかしてるなって思いましたよね(笑)。『外伝』がフルカラー連載なので、スタジオとしてはある程度経験を積んでいたから正直、描くこと自体は大変だと思わなかったんです。『外伝』のやり方で本編もやってみようということなので、スタジオにとっての一番の挑戦は短い時間の中でやりきることだったんですけれど、おそらく編集部のほうが大変なことに挑戦していたと思うんですよね。


――雑誌そのものの作りがいつもと変わってしまう可能性すらある。


漫画雑誌はこれまでにも色々なことをやっていて。前に、かわぐちかいじ先生が新連載で見開きカラーを折り込みポスターみたいな形式にして、ページを開くとワイドスクリーンみたいになる風景を描いたことがあって、こんな発想があるんだって驚いたんですよね。他にも長編連載の一番最後をカラーにするとか、雑誌には色々なアイデアがあって。フルカラーの漫画誌もありますけれど、活版(印刷)の雑誌でフルカラー24ページというのはまずないので凄いなと思うのと、単発ではなく連載途中の漫画なので、単行本にはどうやって載せるのかというのも重要なところで。


――確かに、単行本に収録される際にどうなるかも気になります。


雑誌に24ページフルカラーで載せたのに、単行本でぜんぶ白黒になるのはありえないじゃないですか。だから、雑誌だけではなく単行本の作り方も同時に検討しなければいけないということで、まさに編集者の仕事が活きた企画だったんじゃないかと思います。電子書籍でカラー漫画が増えてきていますが、「じゃあ雑誌でもカラーで漫画をやろう」みたいな簡単な話ではなくて、いくつも越えなければいけないハードルがあって、その上で実現している24ページフルカラー企画なので、ぜひ本誌をお見逃しなく! この後やる人はなかなかいないぞ、と。


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――最後に、連載100回を越えて、これから先の意気込みをお願いします。


『サンダーボルト』を続けることを決めた時点で長期連載は覚悟していたので、自分の中では100回は通過点で、まだ折り返し地点とも思っていないです。自分の作家としての情熱がずっと沸き続けていないと、この長いマラソンを走ることはできないので、手を変え品を変え、常に何か新しいことに挑戦し続けて、チャレンジャーな気持ちを持続させようと心がけているところです。だから、読者のみなさんも太田垣がまた何か新しいバカなことをやっているぞ、というのを楽しみに『サンダーボルト』を読んでいただければと思います。


[2018年1月23日、スタジオトアにて]



(取材・文/平岩真輔)

【2018/02/ 2】

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