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【eBigComic4】漫画アプリで100万PVの人気漫画『報復刑』作者・トータス杉村氏インタビュー(前編)【連載中】

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人気漫画アプリで公開されると、その衝撃的な内容が評判となり、閲覧数100万ビュー超という数字を記録したオリジナル作品、『報復刑』。
死刑が廃止された代わりに、被害者遺族が加害者に直接報復する権利を行使できる「報復刑」制度がある日本に生きる人々の姿を描く意欲作だ。


その『報復刑』が、漫画サイト「eBigComic4」のオープンと共に、満を持して連載化。設定をそのままに、さらなる人間模様を描き出し注目を集めている。
今回、コミスンでは、作者のトータス杉村氏のインタビューを掲載。『報復刑』が生まれた背景から、ネット発ヒット漫画を生んだ氏の歩みまで、前後編でお送りします!!



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『報復刑』が連載中の漫画サイト「eBigComic4」



――死刑制度の代わりに、被害者遺族が直接報復する権利を行使できる「報復刑」制度がある社会を描いて話題になっている『報復刑』ですが、このアイデアはどのように思いついたのですか。


最初にアイデアが浮かんだのは8年以上前なんですけれど、漠然と死刑制度について考えていた時に、もし殺人事件の遺族になってしまい、死刑ではなく無期懲役の判決が出たら悔しいだろうなと。自分だったら報復したいと考えるのかなと思って、そこから色々と広げていきました。


――何か死刑について考えるきっかけとなるような出来事や、報道があったんですか?


とくにこれだというものはないんですけど、凶悪事件が起きたりすると、「これは死刑でしょ」みたいに軽く言うようなことがありますよね。そういうのが気になっていて、そこから死刑制度ってどんな感じなのかなと。調べてみると、日本では死刑廃止の動きがほとんどなく、80%以上が死刑容認派だと分かって。それで、死刑が無くなったらどうなるのかな、と考えて。


――第0話の冒頭でも書かれていますが、先進国では日本とアメリカだけが死刑制度に寛容という。アイデアを膨らませるために現行制度については取材をされたんですか。


とりあえず、賛成派、反対派の意見も含めて死刑制度について勉強しました。あとは、背景写真を撮るために拘置所に行ったくらいです。




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『報復刑』第0話より



――第0話は、上京した女の子が短絡的な犯行で殺されてしまう事件の話ですが、毎回のプロットはどのように練られていますか。


実際の事件の要素を少しずつ入れています。あと、0話とそれ以降の話数では若干、作り方が違っていて、やはり第0話は50ページあるので色々なものを詰め込めたんですけど、第1話からは短編なので、そこらへんは省かないといけないので、描き方も変わってくるのかなと。


――もともと複数回に分けてアプリで発表されていた内容を1本にまとめたのが第0話ですよね。アプリで複数回に分けるときと、Web連載ではネームの切り方や、ラストの「引き」の作り方は変わるものですか。


引きの意識はたぶん変わっていますね。アプリの時は、遺族の感情の動きや、犯人のムカつく言動みたいなところを丁寧に描写して読者の共感ポイントを作ることを習慣にしていたんですけど、連載では1話完結なので、もう少しエモーショナルな部分、見てハッとする部分などインパクトを重視して描いている気がします。


――連載の第1話からは、読後にモヤモヤが残る感じで短編集的な要素が大きいですね。死刑や報復というのはそもそも結論が出しにくいテーマですが、作者として答えは持っているんですか。


持ってないですね。自分の意見をはっきりしてしまうと作品にも投影されるので、極力、ニュートラルな状態で描こうと思っています。


――その感覚は作品からも感じます。作中でも報復刑制度の良し悪しについては定まっていなくて、ある日突然、報復刑の権利を告げられた遺族の葛藤が描かれている。


報復刑の良し悪しについて議論をするような展開はまだ描いていないですが、これから報復刑の執行官の側のエピソードも描いていきたいと思っているので、そこで出していければと思っています。



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作中でも報復刑制度の是非については世論が定まっていない。(第0話)



――そこで報復しちゃうの? みたいなジャッジが分れる局面も考えられますよね。


これから描ける部分はいっぱいあると思っています。実際に報復刑があったら、世の中やネットの反響も色々だと思いますが、僕の印象だと保守的な人は好意的に捉えていて、リベラルよりの人は反対するのかなと感じています。


――そもそもリベラルは死刑制度に対して否定的ですからね。報復刑制度は、日本的な言い方をすれば「仇討ち御免」ですよね。


その現代版ですが、「仇討ち」というのは武士だけの特権で、幕府が管理している訳ではなかったので、報復刑は国の管理下で行われるというのが若干違うのかなと思います。


――死刑の場合は執行されると公告されますが、報復刑が執行された後はどうなっているんですか。


裏設定では報告しないことになっています。加害者の家族による報復の連鎖が起きないようにしているんですけれど、作中ではまだ描けていませんね。


――いまのところ、登場する被害者遺族はみんな「いい人」ですが、事件によっては色々ありそうですよね。


遺族が暴力的な人だったり、反社会的な人であっても報復する権利は平等なので、「悪が報復する」というシチュエーションも描ければ面白いのかなと。未成年であっても等しく適用されるので、加害者が未成年だったり、その逆で未成年が報復することもあります。多様性があるので、色々なことが落とし込めるかなと考えています。



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報復刑が執行されるか否かは遺族の選択に委ねられる......。(第1話)



――複数の被害者遺族が存在するケースも発生しますよね。


過失でなく、殺意をもって多くの人を殺めてしまった場合ですね。報復したいという遺族が複数いれば、複数で同時に執行ということもありかなと。遺族の中で報復刑の執行について賛否が別れる場合は、個々の遺族に対して報復権があるので、一人でも執行したければその人が報復するという形になるでしょう。


――報復刑の存在をベースに、色々なシミュレーションができて興味深いですね。


でも、報復刑制度があったとしても、ほとんどの人は報復をしないのではとなんとなく思っています。いくら自分に正義があったとしても、人を殺すというのは心に負担がかかるので、報復刑の執行を選ぶ人は少ないのかなと。


――現状の死刑執行でも、複数人でボタンを押すような感じで、個人に責任の重さがいかないような仕組みになっていますよね。


実は、最初に描いた『報復刑』の時には、第0話のような内容を描きたかったんですけれど、その時の編集部からは「ボタンにしてはどうか」と言われて。それだと直接ではなく間接的な執行になるので、やはり違ってくるのかなと思って頑なに断っていました。


――単純な死刑制度の置き換えではないということですね。これからどんな話が描かれていくのか楽しみですが、読者にはどう受け取って欲しいと考えていますか。


第0話を描いた時には、死刑制度についてちょっとでも考えてもらえればいいのかな、と思っていたんですけど、それだけでは面白みに欠けるので、今は違うことも感じ取ってくれればいいなと思っていますが、そこで何を伝えたいのかは明確に答えが出ていないですね。



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報復権を与えられた遺族の複雑な感情が描かれる。(第0話)



――「やったぜ! 悪人を倒してスッキリした!」と思われても困ってしまうわけですよね。


極力、読者にそういうカタルシスを与えてしまわないように描きたいというのはありますね。旧来的な「仇討ち」の物語であれば、最後はカタルシスで落ちる部分ですが、あくまでそういう話ではないので。『報復刑』というタイトルだけ見たら、「気持ちよくさせてくれるのかな?」と思う人もいるかもしれませんが、でも実はそこに葛藤とか色々あって、報復した時の感情は思っているよりもシビアだよ、と。つきつめると、報復刑という制度を通して、人間の憎悪や再生を描きたいのかなと思います。


――ある意味すごくSF的な作品で、報復刑というフィクションのリアリティを高めるために絵柄や描写の部分ではかなりリアルさを意識しているのではと感じました。


ファンタジーではなく、現在と続いているように見せたかったので、なるべく現実に沿った感じにしようとは思っています。実際に起きた事件のニュースを観て、もしこれを報復刑で描いたらどうなるだろう、と考えることもありますね。


――かなり刺激的な話でもあるので、読む人によっては「許せない!」というような反応もあるのではと思いますが。


今のところ、そこまで激しい意見はなく、アプリで発表していた時にも好意的な感想が多かったですね。Facebookで議論が盛り上がって、200件くらいコメントがついていたことがありましたが、そうやって考えてくれるのは、賛成意見でも反対意見でもありがたいと思いますね。ただ、うちの母親は反対のようで、「何描いてるの!」みたいな感じで、厳しいですね(笑)。


――「あんた、なんでこんな怖い漫画描いてるの!」みたいな。


ありがちですね。「こんなの描いて、近所の人に言えないわよ!」みたいな雰囲気というか、直接言われてますけど......(笑)。



eBigComic4で連載中『報復刑』最新話(第4話)は3月18日更新!!
インタビュー後編(次週公開予定)では、ネット発ヒット漫画を生み出した作者のバックグラウンドが明らかに......!!



作者プロフィール


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トータス杉村(38歳)
二十代前半で、ちばてつや賞に入選し、名古屋から上京。漫画家、イラストレーターを経て、20代後半でIT業界にキャリアチェンジ。現在、プログラマーとして働きながら、漫画を描いている。



(インタビュー/構成:平岩真輔)


【2016/03/18】

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