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【師弟対談】『カブちゃん』単行本化記念!鍬形ゆり×東村アキコ対談!! 北海道から来た虫愛でる少女はこうして漫画家になった!?

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3月の単行本発売以来、そのキモかわいさが読者の心をとらえて離さない『カブちゃん』。主人公はるなの昆虫への偏愛さながらに『カブちゃん』単行本を大展開して下さる書店もあるなど、各所で話題となっています。



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その作者、鍬形ゆり氏は『かくかくしかじか』『東京タラレバ娘』等で知られる漫画家・東村アキコ氏のアシスタントを経て「月刊!スピリッツ」でデビューした、気鋭の新人漫画家。「連載デビュー作にして、この完成度!」と師匠・東村アキコ氏も唸る『カブちゃん』が生まれるまでの、知られざるエピソードの数々を鍬形・東村両氏に赤裸々に語っていただきました。


北国からやってきた虫愛づる漫画家のデビュー秘話......いま明かされる衝撃の事実!! 『カブちゃん』第1集と併せてお楽しみください!!




刺客? バケモノ? 北からやってきた謎の新人アシ


――『カブちゃん』単行本の帯コメントは、「ヒバナ」で『雪花の虎』を連載中の東村アキコ先生がすごい勢いでカブちゃん愛を叫ばれていますが、鍬形さんは東村プロ出身なんですね。


鍬形ゆり(以下、鍬形) 私が通っていた大学に特別講義でいらした京都精華大学の先生の紹介で、教え子の萩原天晴さん(※1)と知り合ったんです。それで、上京する時に萩原さんが「東村アキコ先生のところで1回ヘルプに入ってみないかい」とおっしゃってくれて。


東村アキコ(以下、東村) 私も、京都精華大とはゲスト講師をやっているご縁があって。萩原はたまたま宮崎の中高の後輩だったんですね。それでよく東村プロに来ていたんですけれど、「北海道に東村先生のところでアシをしたいという子がいるんだけれど、入れてもらえませんか?」と言われて。その時は人手も足りていたし、北海道からうちをアテにして上京してくるというのも荷が重そうだなと思ったので断ったんですよ。萩原が何度かダメですかねと言ってきたので、「まあいいか」と思って来てもらったのが、ゆりさんだったんです。


鍬形 『東京タラレバ娘』の〆切りの日で、1日で50ページを上げてしまうみたいな日に初めて入らせていただいて。トーンもまっすぐはれなくて、皆さんのお仕事を増やしてしまったんですけれど。緊張して先生の顔も見られず、ずっと下を向いていたのに、優しく声をかけてくださって、すごい感動しました。


東村 最初はアシスタント経験もなくてモタモタやってたのに、来る度にどんどん進化していくんですよ。それが1か月とかのペースではなくて、「こうして欲しい」と言ったことを、次の日にはもうできる様になっていて。たぶん家に帰ってから努力しているからなんだけれど、吸収力の異常な高さに、うちのベテランアシ達が「ゆりさんはヤバい」と言い始めて。あっという間にデジタルも覚えて、バケモノだなと思いましたね。


鍬形 とんでもないです。枠線も引けないくらい本当に何にもできなかったので、家で練習させてもらって。先輩方もすごく丁寧に教えていただいたので。あとは自分にできることだけでもやろうと思って、お皿洗いとか、お茶出しくらいの事ですけれど......。


東村 お茶を出すタイミングも完璧で。社長秘書とか、大女優の付き人みたいな空気感があるというか。「あの書類どこいったっけ」とか言うと、スッと出してくるとか、困っている時はゆりさんが解決してくれるみたいな感じで、あっという間にアシスタントの中心的な存在になりました。こんなにアッという間に仕事ができるようになる人は初めてだから、ただものじゃないなって。CIAの工作員とか、どこかのプロダクションから送り込まれてきた刺客なんじゃないかと思うくらい。



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デビュー作『ユーレイのサオリさん』(「月刊!スピリッツ」2016年1月号掲載)



――鍬形さんは、その後「スピリッツ賞」を受賞して「月刊!スピリッツ」でデビューされますが、東村さんは鍬形さんの描いた漫画をご覧になっていたんですか?


東村 ゆりさんが「読んでください」みたいな感じで、前に投稿していた「アフタヌーン四季賞」の冊子を2冊くらい持ってきてくれだんだけれど、忙しくて読めずに置いておいたんですね。それを読んだアシさん達がヤバいヤバいと言い出して。すごい読め読め言ってくるから、仕方なくよんだらこれはすごいかもと思って。そうこうするうちに、ゆりさんにも担当が付くようになりました。


鍬形 スピリッツに掲載されたデビュー読切の『ユーレイのさおりさん』は、東京に来てちょっとおセンチになっていた時に、大学楽しかったな、みたいな感じで描いたので、すこし恥ずかしいんですけれど。それまで描いていたのは真面目すぎて、自分でも読み返すのがつらい感じだったので、東村先生の作品が、真面目なお話しの中にも読者が楽しめるようなギャグを入れて読みやすくなっているのを真似させていただきました。


東村 すごくいい話で、そのままアニメ映画にもなりそうなどんでん返しがあって。このどんでん返しを作ることができない人が多いんですよ。私もできないんですけれど、どんでん返しを作る時点で、お客さんをすごく意識していますし、面白いものを作ろうという意思が感じられるんです。『カブちゃん』を読んだ人にはぜひいつか『ユーレイのさおりさん』も読んで欲しいと思う名作ですね。


―― 初連載の『カブちゃん』もですが、読切の時からちゃんとどんでん返しとか、起伏をつけることをやられているなと思いました。


東村 物語に起伏をつけるというのは誰でもできるんですよ。新人さんがよく描くのだと、主人公が落ち込んでその後立ち上がる、みたいなターンをいくつか作ればそれが起伏になるんだけど、それに必然性がないと読んでも面白くない。ゆりさんの漫画は、本物の起伏がある。それを作れるというのは、キャラクターにちゃんと命が吹き込まれているということなんですよ。キャラが全員生きているというのを、できる人は最初からできるんだなと思いましたね。


鍬形 『カブちゃん』を読んでくれた大学の友人は、女の子キャラ二人の言動が私にそっくりだと言うんです。他のキャラも、けっこう私の周りの人達がそのまま合わさったみたいな感じなんですけれど、自分の色々な面をキャラクターで出しているような気がします。


東村 そういうの大事ですよね。私も自分を複数のキャラに重ねてやるので。一条ゆかり先生の『正しい恋愛のススメ』という漫画があって、お母さんと娘が一人の男と付き合う話なんだけれど、あれは一条先生が、娘は仕事の時の自分、母親はオフの時の自分で、自分を両方に重ねて描いているというんです。作家というのは、性別や国が違っても重ねて描けると思うんですよね。



鍬形さんといると普段見られないものを見てしまう!?


―― 『カブちゃん』だとどのキャラに重ねて描いているんですか。


鍬形 主人公のはるなみたいに綺麗な心はしてないので、周りでギャーギャー言ってるマユちゃんとかのほうに感情を入れて描いている気がします。


東村 どう考えても、はるなでしょう! 愚問だよそれ!!


鍬形 確かに、虫に対する気持ちとかは、はるなに語らせていて......



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主人公はるなと後輩のマユちゃん



東村 『カブちゃん』単行本のあとがきが衝撃的で。私は九州の宮崎出身なんだけれど、カブトムシなんて1回も見たことがなかったのに、ゆりさんが東京で駅から家に帰る間に......何匹だっけ?


鍬形 一番多いときで6匹くらい。夏はだいたい毎晩、道路にてんてんと落ちていて、車にひかれちゃうんですよ。だからそれを助けるしかない! みたいな感じで。


東村 ナウシカっぽく虫を呼び寄せているのか、虫のほうがゆりさんを出迎えているのか...。私は霊とかスピリチュアルとか全く信じていないんですけれど、ゆりさんを見ていると不思議と信じてしまいそうになる。気付くのがゆりさんだけということなのかもしれないけれど。


鍬形 東京に来て、北海道ではみたことがないカマキリとかがいるのに感激して。見たことない虫は触っていいのかわからないんですよね。


東村 東村プロの社員旅行で宮崎に行ったんですけれど、うちの実家よりさらに田舎の方にバーベキューをしに行ったら、ゆりさんが駆け寄ってきて、「すごい!ナナフシがいました!」って。


鍬形 夢だったので、すごい興奮しました。


東村 あと、河原一面に1000匹くらいの沢蟹がいたりとか。宮崎の田舎で育ったけれど、そんなもの一回も見たことがない! というものが、ゆりさんといると見られる。


鍬形 サツマゴキブリとかも見ましたよね。さかさまになって死んでいたのを、ほらいますよ!ってひっくり返したら皆さんがすごく嫌がって......。


東村 夜に肝試しをしようって、近くのお化けが出るというトンネルに行ったんです。幽霊とか信じてないけれど、漫画のネタになるからいいかなと思って。真っ暗で、10人くらいで不気味だねとかいってキャッキャしてたら、アシの水谷緑ちゃん(※2)が「ゆりさんが、ゆりさんが...」って真っ青な顔で震えながらやってきて。トンネルから出てきた車が目の前でヘビを轢いたらしくて、ゆりさんがその死骸をの写メを撮って、「これです~!」みたいな感じで見せに来るの。それまでみんな遊び気分でいたのに、真っ暗な中でゆりさんが持っているスマホの画面だけが光っているのを見てたら怖くで帰りたくなってしまって......。


鍬形 北海道でもよく野生の動物が死んでいたりしたので、それを見ていたんですよ。


東村 もう一人、星名トミー(※3)っていう漫画家の不思議な子がいて、ゆりさんと一緒になってヘビの死骸をじーっと眺めてて。他の人は怖くなっちゃって、私がトンネルの中にいる男子を呼び戻しにいこうとしたら、緑ちゃんがトンネルの中に入ってはいけないと思ったらしくて、「先生入っちゃだめ!」言おうとしたのに、恐怖で声が出ないの。それを見たトミーとゆりがケケケケケッと笑っていて......。その後、帰ってから緑ちゃんと私が相次いで入院したっていう、ホラーな夜だったな......。まあバカな旅行でしたね。



応援せずにはいられない...東村プロが総力を結集!?


東村 ゆりさんは、北海道で教育大学の美術課程にいたから、絵の勉強もしっかりしていて、基礎がすごいある子だと思うんですよね。デッサンをやってきた人の絵だなという気がしますね。北海道でも漫画を描いていたんだっけ?


鍬形 「四季賞」に投稿した作品とかは、北海道の頃に描いていました。


東村 いい話なんだけれど、私が朝10時くらいに仕事場に来ると、ゆりさんと先輩アシスタントのヤマジさん(※4)というトーン指定の神みたいな人が早めに来て、『カブちゃん』の原稿のトーン指定の相談に乗っていたりするんですよ。普通、他人の漫画にそこまでしないですよ。


鍬形 本当にありがたいです。私が上京する前の晩に読んだのが、東京にいくなら読んでおいたほうがいいみたいな感じで友達がもたせてくれた『かくかくしかじか』の最終巻でだったので、まさかお会いできた上に、こんなにいろいろしていただけるなんて、感動でいっぱいです。


――アシスタントさんがデビューされるときに、そこまでバックアップされることはあるんですか。


東村 見たことないですね。ゆりさんが『カブちゃん』を描き始めたのが24歳で、自分の娘とまではいかないけれど、若いこが一生懸命やってるのを見てるとおせっかいで手伝いたくなっちゃうんですよ。前に仕事場の玄関でゆりさんとヤマジさんが、それこそカブトムシみたいにもみ合ってて。なにかと思ったら、ゆりさんが手伝ってくれたお礼にって封筒でお金を渡そうとしていて......(笑)。


鍬形 結局、受け取っていただけなくて。


東村 ぜんぜん手伝わない作品だってあるので、『カブちゃん』はみんながかまいたくなっちゃう作品だったんですよ。みんな頼まれたわけでもないのに、関わりたいと思ったんじゃないですか。


鍬形 他の先輩たちも、みなさん付き合ってくれて。最初のカラーの塗り方が分からないときとかも、本当に力になっていただきました。



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東村プロ(と鍬形ゆり氏のお父さん)の総力が結集した衝撃の見開き



東村 カラーの塗り方も初めてだったから、ベテランの先輩アシが指導してて。私もけっこうアドバイスしたよね。この花はタチアオイにしようとか言って。1話で地球が爆発するシーンなんかは、ゆりさんが上手く描けないと悩んでいて。これでいいと思いますかといって持ってきた下絵が上手かったので、ゆりさんが描いたの? って聞いたら、父に描いてもらったんですって(笑)。お父さんが地球爆発シーンの下絵を描いているんですよ。何者なんだ!って。


鍬形 電話で、ちらっと星が描けないといったら、なぜかいきなり送ってきたんです。


東村 それがちゃんと描けているんですよ。さすがにペン入れまではできないから、ゆりさんがペンをいれて、うちのベテランアシスタントで、『ブラックジャックによろしく』の背景を描いていた伊藤さんが仕上げとトーンと手伝って。さらに私が上からホワイトを乗せたりして、あのシーンは東村プロとお父さんの全面バックアップで出来てますね。


鍬形 あのシーンは本当に描けなくてどうしようってベソをかいていたので、先輩たちに頼ってしまって。本当にありがたかったです。その後も、6話でヘリコプターが出てくるシーンも、まさかの父が下描きを送ってくるという。


東村 そうなの!? ヘリコプターがえらく上手でびっくりしたんだけれど.。写真トレスじゃないなとは感じたから、伊藤さんかなと思っていたんだけれど......。お父さんは3Dで物事を考えられるタイプの人だね。


鍬形 人間はぜんぜん描けないみたいですけど、設計とか製図とかをやっていて、戦車とか船とかがものすごい好きで、ほっとくと描いているんです。



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前代未聞!? なぜか作者のお父さんが下絵を描いたヘリコプター!



東村 ゆりさんのお父さんは「先生お世話になってます」といって、北海道の美味しいものをすごい送ってくださるんですよ。この前、うちの父(『ひまわりっ ~健一レジェンド~』参照)が、ずうずうしいを超えて頭がおかしいと思うんだけれど、「一度でいいから鮭をまるごと食べてみたい」ってお願いしたら、本当に乾燥した鮭がまるごと1本送られてきて。


鍬形 宮崎に旅行に行かせていただいてお世話になったので、なにかお好きなものがあればということで、父が手作りで干した鮭を。カチコチで食べ難かったかも...。


――それも手作りなんですか! なんというか、お父さんのスーパーマンっぷりが衝撃ですね。


東村 ゆりさんも本人のエピソードも衝撃的で。東京にでてきたばかりで、ぜんぜんお金がないから、私がいつも食べ物をあげたりしていたんですけれど、締め切り明けにみんなで居酒屋に行って、帰りにお会計をしていたら、ゆりさんがぜんぜん店から出てこなくて。「ゆりさん遅くない?」ってなった頃に、食べ物でパンパンに膨らんだ口を抑えながら「すいませ~ん」って。栄養摂取しようとして、みんなが残した突き出しの酢の物やきんぴらをぜんぶ口の中に入れて出てきたたのが、すごい笑えました。本当に変わった子ですよね。


鍬形 もともと、すごい意地汚いんです(笑)。


東村 テレビも見ないんですよ。この間まで、ダウンタウンも知らなくて。アシスタントの子が、「先生、ゆりさんダウンタウン知らないんですよ。ヤバくないですか」っていうから、さすがにそれは冗談でしょと思って聞いてみたら、「ハマちゃんさんっていう方がいるグループですよね」って、最近知ったくらいの感じで。


鍬形 父がバラエティーとか嫌いだったらしくて、NHKと「どうぶつ奇想天外」くらいしか見せてもらえなかったんですよ。こっちにきて、ちょっと覚えました。ミヤネ屋さんとか。


東村 カラオケに行くと、都はるみの「好きになった人」とか、キャンディーズとかを歌ってくれるんですよ。お婆ちゃんがラジカセで聴いていたから、それが流行歌だと思っていたんだって。


――中高大と学校に通っていたのに、なんでそんなことに?


鍬形 中学生の時は、ちょっと頑張って友達の話題についていこうと思ってミュージックステーションとか見てみたんですけれど、よくわからなくて。どう情報を取り入れたらいいのか、いまでも難しいです......。



――だいぶ異次元を生きている感じがしますね......。


東村 本当に不思議なんですよ。よく映画とか漫画で、どこからか不思議な少女が現れて皆をハッピーにしていくみたいな話があるけれど、ゆりさんといると、リアルで自分たちにそれが起こっている感覚なんです。いきなり連載デビュー作でこれだけ漫画を描ける人は見たことないですもん。


鍬形 本当に、みなさんに支えられて描いた1冊なので、たくさんの人に読んでもらえたら嬉しいです。


東村 1話目のネームを読んだときに、本当にカブちゃんに心をつかまれたから。



『カブちゃん』を描いた鍬形ゆりは王道の漫画家をやっている


――東村さんが『カブちゃん』の中で特に好きなエピソードはありますか?


東村 私はギャグ漫画家なので、コメディっぽいシーンのボリュームが多いと好きになってしまうんですけれど、4話を読んだ時に笑い死ぬかと思ったんですよね。カブちゃんの鳴き声の話なんですけれど、これは本当にみんなに読んでほしい!


鍬形 どれくらいギャグを入れたらいいのかが難しくて。先生は本当にバランスがよくて、改めて素晴らしいなと思いました。いくつギャグをいれようとか考えながら描かれているんですか?


東村 全部感覚でやっているけれど、ページ1個はいれようかな、みたいな。


鍬形 そうなんですね。



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『カブちゃん』第4話「リトルプリンス」より



東村 最近、新しくiPadProを買ったんですよ。絵を描けるやつ。すごい描きやすいから、アシスタントのみんなに試し描きしてみなよって言ってて。ふと、ゆりさんが描いているのを見たら変なキャラをいっぱい描いていて。


鍬形 描いていたら、なんか楽しくなってきて。ふざけすぎで申し訳ないです。


東村 そのまま消そうとするから、消すな!っていって(笑)。なんていうか、ゆりさんはこうやって手先から無限に生まれてきちゃうタイプの人だと思うんですよ。



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こんな感じのヤバいキャラがiPad Proの画面いっぱいに......(第3話「カブちゃんのおうち」より)



鍬形 大学の時も、そういうのをちょっとマシにした感じのものを製作していたので、就活の時のポートフォリオが本当に頭のおかしい感じになっていたんですよ。


――そういうキャラは小さい頃から描いていたんですか?


鍬形 あまり覚えがないんですけれど、小学校からの一番仲の良い友達は、描いていたっていうので、無意識でずっと描いていたみたいです。


――はるなががカブちゃんの部屋の中に描いた、心に闇を抱えている人の絵みたいな。


鍬形 まさしく何も考えないで描くと、ああいう感じになっちゃうんですね。カブちゃん自体は、そこからだいぶマイルドにしてキャラクターっぽくさせた感じです。


――大学の個展で作った「おさかな分隊長」のぬいぐるみを東村先生に見せたことが、カブちゃんのキャラクターが生まれるきっかけになったんですよね。


鍬形 改めて写真で見るとだいぶダメな感じですけれど、おさかな分隊長を先生の前にもっていったときに、面白いねと言ってくださって。やっぱり私の作品はこういうのから離れられないのかなと思いました。


東村 ゆりさんがそれまでに描いていた漫画には、こんな変キャラ出てこないですからね。


鍬形 そうですね。おさかな分隊長をもう少し可愛くソフトにして、虫とかと組み合わせたら面白いかなと思ってできたのがカブちゃんです。最初はもっと虫っぽくて、手足とかも細かったんです。カブちゃんは二度見とか三度見とかしてもらえる、なんだこれって思うような変な感じにしたくて、眼だけはすごい時間がかかってます。



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おさかな分隊長のぬいぐるみ



東村 ゆりさんが、今後描いてみたいものとかテーマってある?


鍬形 そうですね......変な生き物を出しつつ、それでちょっとしんみりとかさせられたらいいなと思うんですけれど。


東村 読者としてもは、もっとカブちゃんの話を読みたいよね。クワガタとか他のキャラとかも見てみたいし。


――カブちゃん的な生き物が他にもいる可能性があるんですね......!


鍬形 そうですね、まだカブちゃんも正体が判明していないので。


東村 最近の傾向だと、新人さんはグルメ漫画みたいなワンテーマものをやらざるをえない状況があるんですよね。それならみんな手に取ってくれるので。芸人でいえばテレビ番組に合わせてネタ時間が短くなっていくような、そういう状況が変わってくるのは仕方がないんですけれど、そんな時代の中で、「不思議な生き物を中心とした人間模様」みたいなすごい昔からある王道の漫画ををやるというのは、本当に一部の人にしかできないと思うんです。やらないんじゃなくて、できない。ゆりさんは、新人で初連載なのに、王道に踏み込んで描いていて。私は、これこそが「漫画」だと思うんですね。この時代に、本物の漫画を描いている新人がいるというのは、先輩としてすごく嬉しいし、頼もしいんです。だから、ゆりさんはこのまま成長していくべきだと思うし、10年、20年先を見たときに、ゆりさんが王道の作家になっていてくれないと、この漫画界は終わりだと思いますよ!


鍬形 ありがとうございます...。


東村 やっぱり描きたいものを描かないと面白いわけないじゃないですか。私も好きなものだけ描いてきたタイプなので、すごく思います。いまの新人さんの漫画って、窮屈なんですよ。絵も上手いし、話もキャッチーなのに、なんか苦しそうだなと思ってしまう。でも、『カブちゃん』は縛られていない感じがするんです。この漫画の中には、酸素がいっぱいある気がする。読者の人には、その違いを分かってほしい!!


鍬形 確かに『カブちゃん』はすごくのびのびと描けたので楽しかったです。


東村 息苦しさがないってすごく稀有なことなんですよ。なんか最後は壮大に〆てしまった感じだけれど、本気だから!!



※1 萩原天晴 漫画原作者。京都精華大学マンガプロデュースコース卒。月刊ヤングマガジンで連載中の『中間管理職トネガワ』が「このマンガがすごい!2017」(宝島者)オトコ編第1位に。
※2 水谷緑 漫画家。医療系のコミックエッセイを多く手掛ける。
※3 星名トミー 漫画家。「ベツコミ」にて活躍中。
※4 森ヤマジ 漫画家。4コマ育児エッセイ漫画を発表。



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ゆるキモ青春コメディ『カブちゃん』の作者・鍬形ゆり氏に直撃インタビュー!! カブトムシLOVEな女の子と謎のキモかわ生物が描かれた背景が明らかに!!
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(取材・構成/平岩真輔)



【2017/04/26】

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カブちゃん 1
鍬形ゆり

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