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【インタビュー】漫画原作者に聞く! 第2回『賭ケグルイ』河本ほむら氏(その1)

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 漫画好きの方なら、よく目にしているかもしれない「漫画原作者」という文字。
でも、その「漫画原作者」が、実際にどういう事をしているのかを知っている人は少ないのでは......?
そこで、コミスンでは、著名な漫画原作者に直接、
「漫画原作者ってどんな職業なんですか?」
「漫画原作には何が書かれているのですか?」
「どうやったら、漫画原作者になれるのでしょうか?」
といった、素朴な疑問をぶつけてみることにしました!
 第2回は、TVアニメ化、連続ドラマ化とメディア展開が続く『賭ケグルイ』の原作者・河本ほむら氏に、出版社の壁を越えて、お話を伺ってきました。
漫画家、漫画原作者、漫画編集者、すべての漫画に関わる方、漫画好きの方、必読のインタビューです!



アニメ化! ドラマ化! メディア展開が続く大ヒット学園ギャンブル漫画 『賭ケグルイ』とは!?

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『賭ケグルイ』原作・河本ほむら/作画・尚村 透
連載「ガンガンJOKER」(スクウェア・エニックス)


 賭すこと、それが私の存在理由
 名門・私立百花王学園。この学園には階級制度が存在する。
 生徒会を頂点とするこの学校は「ギャンブル」に支配されている。
 勝てば天国。負ければ地獄。ギャンブル強者は羨望、負ければ地獄。
 そんな学園に、一人の少女が転校してくる。
 彼女の名前は蛇喰夢子(じゃばみ ゆめこ)......。


【スピンオフ作品】
『賭ケグルイ双(ツイン)』(作画・斎木 桂)
『賭ケグルイ妄(ミダリ)』(作画・柊 裕一)
『賭ケグルイ(仮)(カッコカリ)』(作画・川村 拓)
スクウェア・エニックス「ガンガンJOKER」『賭ケグルイ』公式サイトより)



漫画家になるのは諦めていました


――『賭ケグルイ』のアニメ化、第二期が決まったそうですが、おめでとうございます。


河本 ありがとうございます。おかげさまで、好評で。スタッフの方に、素晴らしいアニメにしていただきました。


――先ごろ(2018年1月~3月)実写のテレビドラマも放送されました。


河本 ドラマ化は、最初は「本当に実写化できるのかな?」と思ったんですが、観たら、本当に面白く作っていただいて。


――今現在、『賭ケグルイ』の本編の他に『賭ケグルイ双(ツイン)』(作画・斎木 桂)、『賭ケグルイ妄(ミダリ)』(作画・柊 裕一)、『賭ケグルイ(仮)(カッコカリ)』(作画・川村 拓)を連載され、まさに快進撃といった感じですね。


河本 僕が原作ネームを描いたものが、漫画家の方々の手ですごい漫画になり、さらにすばらしいスタッフの手によってアニメや、ドラマになって。才能がある方がやってくださったおかげで、僕が一人で考えていたものよりも、ずっといいものが出来たなと思います。



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――河本さんは漫画原作を「ネーム」で描かれるそうですが、やはり漫画家を目指しておられたのですか?


河本 漫画はずっと好きで、自分でも描いたりしていましたが、自分は絵が下手すぎるので、「プロの漫画家になるのは無理だな」と諦めていたんです。
ただ、趣味では描いていまして、「新都社(にいとしゃ)」という、自由に漫画を発表できるサイトに、描いた漫画を投稿するようになりました。それまで友だちや家族に見せるだけでしたが、はじめて人に見せることを意識して描くようになりましたね。


――趣味で漫画を描いておられた河本さんが、漫画原作者になったのは、どのようなきっかけで?


河本 2013年に、スクウェア・エニックス社が募集している「ガンガンJOKER新人マンガ賞」のネーム原作部門に応募して、奨励賞を受賞したのがきっかけです。
 法科大学院に通っていた時、冬休みにパソコンが壊れてしまいまして、趣味のネットサーフィンができなくなり暇になってしまったんです。そんな時「ネーム原作」で応募できる漫画賞があるというのを知りまして、「これなら冬休み期間に描けるんじゃないか」ということで、応募してみたんです。


――受賞されてから、『賭ケグルイ』の連載開始までどれくらいの期間だったのですか?


河本 受賞から半年くらいでしょうか。1年は経っていないですね。担当編集者の佐々木さんに、「じゃあ、連載を目指してネームを作ろうか」言われまして、ネームを描いては直すという作業を半年くらい繰り返しました。


――それまで漫画は独学で学ばれていたのですか?


河本 そうですね。独学で本当に何も知りませんでしたので、担当の佐々木さんにはイチから教えてもらいました。「漫画には『めくり』とか『引き』とかいうものがあってね」とか教えていただいて、「おー!すごい!」(笑)と驚いたことを、今でも憶えています。


――『賭ケグルイ』を尚村 透先生が描くことになったのはどういう経緯だったんですか?


河本 それは担当の佐々木さん(スクウェア・エニックス「ガンガンJOKER」編集部 佐々木克行氏)の方がよくご存知だと思います。


佐々木 編集会議に『賭ケグルイ』のネームを出しては、直して、ということを繰り返すうちに、内容も洗練されてきた頃に、尚村先生の担当者から「この作品の作画は尚村透先生でどうか」という提案がありました。『賭ケグルイ』は原作と作画を1人の編集者が担当するのではなく、それぞれの担当がはっきり分かれています。


『賭ケグルイ』の原作原稿(ネーム)拝見!


――この「漫画原作者に訊く」では、「漫画原作というのはどういうものなのか」「どうやって書けばいいのか」「ネーム原作ってどこまで描き込むのだろうとか」ということをお伺いするために、毎回、漫画原作者のプロの原稿をお見せいただいています。よろしければ、漫画原作(ネーム)をお見せいただけないでしょうか。


河本 連載が進むにしたがって、どんどん簡略化していっているのですが(笑)......これは『賭ケグルイ』第2巻の「債務整理大集会」編のネームですね。



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『賭ケグルイ』第2巻P92-93より "奴隷"となった主人公・夢子とライバル・芽亜里(メアリ)が「債務整理大集会」は自分の人生を賭けて大勝負に挑む場面。ネームから、大きくコマ割りや構図、演出が変更されているが、セリフは変わらない。


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©Homura Kawamoto・Toru Naomura/SQUARE ENIX



――拝見しましたところ、だいぶコマ割りが変わっているようですが、作画の方が内容を変更することはあるのですか?


河本 セリフが変わることは、ほぼないです。ただ、コマ割りや演出などは、僕が考えるより作画家さんが考えた方が、いい感じになると思いますので、そのあたりは、読者の方にできるだけいい形で読んでもらえるようにお任せにしています。


――河本先生は、『賭ケグルイ』のスピンオフでも、いろいろな作画家さんと組まれていますが、作画者によって、原作の描き方を変えられたりはしますか?


河本 それは特にないですね。


――最初にプロットやシナリオを文字で書かれたりはするんでしょうか? それとも、いきなりネームを描かれるのでしょうか?


河本 プロットは必ず作ります。昔はもう少し丁寧なプロットを作っていたんですが、今は箇条書きみたいな、「こうなって、こうなって、こうなる」といった感じでバーっと書く感じです。


原作者から漫画家への想い


――ネーム原作で描いたが、「えっ、こうなったの!?」と驚かれた作画はありますか?


河本 予想もしないところが大ゴマになったり、アクションが大きく変わったりということがたまにあります。
 例えば、『賭ケグルイ』第6巻の「生志摩妄(いきしま・みだり)」というキャラクターが登場するシーンで、僕は普通にただ喋っている形で彼女を描いていたんですが......



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左ページ上のコマのキャラクターが「生志摩 妄(いきしま・みだり)」。河本氏のネームでは普通に喋っているが......。


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『賭ケグルイ』第6巻 P36-37より。
©Homura Kawamoto・Toru Naomura/SQUARE ENIX



河本 上がってきた作画では「髪の毛を食べながら喋っている」という感じになっていました(笑)。


――作画家さんの中でもキャラクターが育って、仕草やアクションにもそれが出てくるんでしょうか?


河本 それもあるんでしょうが、多分、僕の描いたネームを見て
「キャラクターの動きが無さすぎる! これでは漫画にならない!」
と思って、そういう形にしてくれたんじゃないかと思います(笑)。本当にありがたいです。


佐々木 ギャンブルの駆け引きというのは動きがない「会話劇」を描いているので、それをどう漫画にするかで、作画者さんの腕が問われる部分もあると思います。


――ギャンブルの説明などで、文字が多くなりがちですが、『賭ケグルイ』はそのあたりも気にならないように工夫されていますね。


河本 かなり初期の頃に担当の佐々木さんに「もっとコマを大きくしてください」「4コマで説明するんじゃなく、1コマにまとめて」と言われたのはいまだに覚えています。



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夢子と芽亜里は"ミケ"(奴隷)の身分に落ち、逆転を狙って「債務整理大集会」に参加。そこで横暴な男子生徒・戸渡と、彼に奴隷として虐待される蕾(つぼみ)奈々美と対決することになるが......


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『賭ケグルイ』第2巻P132-133より。
©Homura Kawamoto・Toru Naomura/SQUARE ENIX



――原作者である河本先生にとって、作画者さんは、どんな存在でしょうか。


河本 ただただ、尊敬していますね。こんな画を描けるなんてすごいなと。こんなにいい感じに仕上げてもらえるのは、本当に嬉しいと常に思っています。
 まず、下描きが上がってくると感動します。完成原稿を見る時は、もう「至福の時間」という感じで、一番楽しいです。その一瞬のために頑張っているようなところがありますね。
 ほぼ全部、自分の予想を上回って描いていただいていて、とても自分が考えた作品とは思えないです(笑)。


――こんなタイプの作画者さんと組むのがやりやすいというのはありますか?


河本 他社も含めて、今まで描いた中で、やりにくいと思ったことはなくて。みなさんすごくやりやすいです。みなさん、原作を尊重してくれて、キャラクターを好きでいてくれているというのを感じますね。


――漫画家さんとは、直接お会いすることは多いですか?


河本 それほど密にという感じではなく、担当さんを通して、という感じですね。
実際にお会いするのはパーティーなどで、年に2回くらいでしょうか。柊先生とは、何回か飲んだことがあります(笑)。
やはり、時々しかお会いしないからこそ、「ここ、観客100人います」とか、作画コストを意識せずにネームを描けているのかもしれない(笑)。アニメ化された際、みんなでスタジオを見学しようということになって、『賭ケグルイ』の尚村先生、『双』の斎木桂先生、『妄』の柊裕一先生、『(仮)』の川村拓先生と、全員で集まる機会があったんです。僕も呼ばれたんですが、これは僕が行かないと、100パーセント僕への悪口大会になるなと思って、絶対に行こうと思いました(笑)。


原作者にとって編集者とは?


――こんなに見事なチームワークで素晴らしい作品を作り上げているのに、たまにしかお会いにならないというのは、少し不思議な気もしますね。


河本 そのあたりは担当さんのおかげですね。


佐々木 河本さんはプロの原作者として、全体のグランドデザインやキャラクターの性格や容姿・立ち位置、ストーリーといったことを担当されるわけですが、作画者の尚村さんもまた、作画のプロとして、具体的なキャラクターデザインや、画的なクオリティ、ギャンブルをヴィジュアル的にどう描くかの検証などを担当されているわけで、お二人とも、作品に関して考えるべきところがそれぞれはっきりと分かれているんです。


――担当編集者というのは、漫画原作者にとっては、どういう存在でしょうか。


河本 漫画を面白くしてくれるのに必要な、いてくれないと困る存在です。直接漫画に関わること以外の、実務的なこともやっていただいていて、ありがたいです。
 最近、つくづく思うのですが、やっぱり人間は自分には甘いじゃないですか(笑)。誰かから「ここはこうして下さいよ」とか「それじゃ面白くないですよ」と言ってもらえないと、修正しないんですね。
その点でも、担当さんは大事で、こっちが「まあ、こんなもんでいいだろう」みたいな感じで提出すると、だいたい「いやいや、これではダメでしょう」とちゃんと修正を入れてくれるんです。そうやって、毎月『賭ケグルイ』に関しては、最低4往復くらいは修正が入りますね。


――現在も多くの連載を抱えておられますが、お休みの方はとられてますか?


河本 「この日は全く描かない」というのはほぼなくて、大作ゲームが出たときくらいですね。【その2へ続く】



漫画原作者に聞く! 河本ほむら氏インタビュー [その1][その2]



(取材・構成:山科清春)


バックナンバー
 漫画原作者に聞く! 第1回 リチャード・ウー(長崎尚志)



【2018/05/21】

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