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【インタビュー】漫画原作者に聞く! 第2回『賭ケグルイ』河本ほむら氏(その2)

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漫画好きでも知っているようで知らない、漫画原作者という仕事。
素朴な疑問を直接、漫画原作者にぶつけるインタビューシリーズ「漫画原作者に聞く!」
第2回は出版社の壁を越えて、『賭ケグルイ』(スクウェア・エニックス刊)の原作者・河本ほむら氏にお話を伺っています!!(インタビューその1から読む)


漫画原作者に聞く! 河本ほむら氏インタビュー [その1][その2]



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『賭ケグルイ』その発想の原点とは?


――ギャンブル漫画といえば「おじさん」が手に取る雑誌というイメージが強いかと思いますが、「美少女によるギャンブル漫画」というアイデアを思いついたのは?


河本 今でも覚えているのですが、大学3年生の時に、ギャンブル漫画が好きだったんですが、「なんで主人公が女の子じゃないんだろう」「なんでそういう漫画がないんだろう」と思いまして、「新都社」で描いていたので、「自分で描くか」と。新都社で女の子が主人公のギャンブル漫画を描いて発表したんです。


――新都社で発表された『ドミニウム~極色少女賭博伝~』という漫画ですね。『賭ケグルイ』の原形のような感じで面白いですね。


河本 初めて、人の目を意識して、人目を引かないといけないと思って描きました。
 あまりページ数が多くなると更新が大変なので、1回に6ページ更新すると決めたのですが、更新するたびに、毎回、その6ページの中で必ず読者を「ワッ」といわせたり、面白いシーンを入れていかないといけないという「縛り」がありましたが、今考えると結果的によかったんじゃないかと思います。


――『賭ケグルイ』の中には、1話の中で3回くらいどんでん返しがあったりして、何でこんなことが出来るんだろう、と思っていましたが、この6ページの中で盛り上げるというのは、まさにそれですね。


河本 今、『賭ケグルイ妄(ミダリ)』を、アプリで毎回10ページずつ連載しているのですが、やっぱり10ページに1回は盛り上げないといけないので、今考えると、その経験が活きているんじゃないかと思います。



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漫画はキャラクターが先


――ギャンブルシーンの追い詰められる人間の心の動き、精神状態などの描写は、どうやって描かれているのでしょうか? 何か特別な勉強をされたのでしょうか?


河本 そういうのはないですね。想像です。キャラクターになり切って描いているというところはありますね。自分が、夢子なり、芽亜里なり、対戦相手なりの立場になったら、どうかなというのは、常に考えながら描いています。


佐々木 感情移入先が次々に変わっていく漫画なので、いろんなキャラクターに感情移入できるようになっていて、漫画のつくりとして面白いですね。


――たとえば「妄」のような、エキセントリックなキャラクターにも感情移入ができるのは、キャラクターに一本筋が通っているからだと思うのですが、キャラクターを新たに創る時はどなたかをモデルにしたりはしているのでしょうか?


河本 モデルは一切ありません。現実の世界がイヤで漫画を描いているので(笑)、現実世界を思い出すようなことはあまり入れていません。
漫画家の方が「漫画の登場人物は、全部ちょっとは《自分》が入っている」とおっしゃっていたのを読んだのですが、絶対その通りだなと思います。全員、自分が演技しているようなものだと思うんです。設定は自分とは全く違う人物なのですが、それに沿って考えているのは自分なので、どこかしら自分が入ってしまうんです。


――作品を創る時は、キャラが先でしょうか? ストーリーやトリックが先でしょうか。


河本 ストーリーが先の話も好きなのですが、漫画はやはり、キャラクターが先だと思っています。ストーリーを先に創れるのは、たとえば小説の単行本のように、お客さんが手にとったときに全部読める状態になってるものじゃないと、商売としては成り立ちづらいのかなと思います。漫画は、どのタイミングで終わるか分かりませんので。
『賭ケグルイ』も最初は、2巻で終わる場合と、4巻で終わる場合と、それ以上続く場合と、3パターンの話を考えておいてください、と言われました(笑)。


――どのキャラクターが一番予想を裏切ってきたと思いますか?


河本 いろいろありますね(笑)。芽亜里か、皇伊月(すめらぎ・いつき)か...結構、清華(さやか)もそうですね。逆に主人公の夢子はブレなさすぎる、とは自分でも思います。


――五十嵐清華は、最初は生徒会長の綺羅莉(きらり)に付き従う脇役的なキャラクターでしたね。


河本 清華というキャラクターは、会長を尊敬していて、会長の言うことには従う、というキャラクターだったんですが、まさかこんなに心酔しているとは思いませんでした。
というのも、第2巻の最後のシーンで、僕が描いたネームでは、清華が普通に立って喋っていたんですが、尚村先生がそれを、会長の椅子を撫でながら喋っている、というふうに描いてきて、「これ、清華、絶対に会長のこと好きやん」と思ったんです(笑)。
そういうふうに、尚村先生が、僕の描いたことに解釈を加えてキャラクターを乗せてくる。それに僕がインスピレーションを受けるという、お互いに刺激しあっている部分はありますね。


――生志摩 妄(いきしま・みだり)」なども、最初はエキセントリックな敵キャラクターとして登場しましたが、その「妄」も人気が出て、主人公にしたスピンオフができたり。


河本 実写ドラマ化の時、妄なんて、実写にできないだろうと思っていたのですが、ドラマ版の妄は、すごく良かったですね。


奇抜なギャンブルのアイデアは「出し惜しみ禁止ルール」から生まれる!


――今の漫画は、ストーリーの立ち上がりが早くないといけないという状況があると思いますが、原作を描かれる上で、そういうところを意識はされていますか?


河本 それは間違いないですね。毎回、面白いと考えたことは、とりあえず全部出そうと思っています。


佐々木 漫画に関しては、1巻が売れなければ、2巻がそれ以上売れることはありませんから、連載当初からの合言葉は「出し惜しみ禁止」でした。


河本 1巻のラストで主人公の夢子を負けさせて奴隷落ちさせたりしたのも、そういうことからですね。
個人的には『賭ケグルイ双(ツイン)』の3巻の「宝探し」篇が、一番出し惜しみしていないですね。本当はこれだけで単行本3巻は使いたかったアイデアです。
最初は出し惜しみせずに、ドンドンいけばいいんですが、だんだん出し尽くしてしまって、追い詰められてくる(笑)。もちろん、それでも出し惜しみはしないのですが。


――奇抜なギャンブルのアイデアや知識はどうやって蓄積されているのでしょうか?


河本 僕は基本的にはギャンブルは一切やらないので、本を読んでというのが多いですね。
特に最初の頃は、ギャンブルをしている人がどうなっていくのか、ということに興味があり、ゲームの内容は後から考える、みたいな感じでしたね。
最近は、ゲームをたくさん考えなきゃいけないので、ちょっと勉強していて、ボードゲームなどもしたりするので、そのへんも参考にしたいと思っています。



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河本氏による『賭ケグルイ』第2巻に登場したオリジナルゲーム「二枚インディアンポーカー」のルール説明。



佐々木 取材のために、一緒に麻雀をしたり、というのはありますが、特定のゲームをやり込むという感じではないですね。


河本 佐々木さんとポーカーをした時、僕よりはるかに強くて、お互いに初心者のはずなのに、こんなに違うんだろうかと(笑)。


――これまでに何パターンくらいのオリジナルギャンブルを考えられたんでしょうか?


河本 先日、使用しているネタを数えたら現時点で30種類くらいですね。数は努力でなんとかなるので、そこは労を惜しまずやろうと思っています。『賭ケグルイ』の本編の方は骨太なギャンブル、『双(ツイン)』の方は婚活や宝探しなど、ちょっとチャラめというか、雰囲気を若干変えて考えています。
実際にやってみたというファンの方の話を聞くと嬉しいですね。


――アイデアの元になる本というのは、たとえばどのようなジャンルの本でしょうか?


河本 僕はミステリー小説が好きで、特に島田荘司さんの小説『占星術殺人事件』がものすごく好きなんです。この作品のトリックは、言われてみればすごく簡単なのですが、その1つのトリックによって、今までの謎が全部解ける。僕もこういう形態の作品を描いてみたいと思っていました。叙述トリックにメチャクチャハマった時期がありまして、我孫子武丸さんの『殺戮に至る病』なども最高ですね。元々はゲームの『かまいたちの夜』(チュンソフト)が好きで、そこから入っていった感じです。
 漫画だとやはり『カイジ』(福本伸行)ですね。「こんな漫画があるんだ!」と思いました。


「ギャンブルの面白さ」と「キャラクターの魅力」の最大公約数を狙う!


――ギャンブル漫画を描きたいという人にアドバイスはありますか?


河本 一般の原作者志望の方に言っておきたいこととして、一般論としては先程の「出し惜しみするな」ということなんですが、「ギャンブル漫画」を志す人には、それに加えて「ギャンブルを描くのもいいんだけど、結局はギャンブルをやっている《人》を描くんだ」ということでしょうか。
僕もそうなんですが、「ギャンブル漫画」を好きな人は、「ギャンブルそのもの」に注目して読むんです。でも、それがいくら面白くても、それだけで500円出して単行本を買ってくれる人は多くない。
大多数のみんなが見たいのは「キャラクター」で、「ギャンブル」自体は味付けなんです。
「面白いギャンブルを描きたい」という気持ちはすごくわかるんだけど、そこは「人」「キャラクター」を描くんだよ、というのを意識したほうが、結果的により多くの人に受け入れられて、作品を世に出せるんだと思います。
たとえば、『カイジ』は、カイジというキャラクターだから面白いんです。やってるのがカイジじゃなかったら、あそこまで面白くない。
担当の佐々木さんにも「ギャンブルの辻褄があっていない」ということと、「ギャンブルのルール説明を読み飛ばしても、面白くなるようにしてね」と、よく考えたら矛盾していることを言われることがあります(笑)。


――ベースとなるギャンブルのアイデアの面白さやウンチク的な部分だけでなく、キャラクターのリアクションとか、心理の駆け引きみたいなところにこそ漫画としての面白さがあるということでしょうか。


河本 そうですね。今、どういうギャンブルをしているかを全く把握していなくても、キャラクターの「顔」と「セリフ」だけで、どちらが有利で、どちらが追い詰められているのか、ということがわかって、楽しめる作りにしないといけない。
 自分としては「キャラクターの動き」も「ギャンブル自体」も、どちらも好きなので、できれば両方とりたい。その「《最大公約数》を求めていこう」と、よく佐々木さんと話しますね。


佐々木 強いキャラクターたちに支えられているところもあるし、ゲームの毎回のアイデアも面白くしなければいけない。その最大公約数をとろうということですね。



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ネーム原作者は有利! 下手でも漫画を描いてみればいい


――漫画原作者になりたいと思っている人が、たくさんいると思うのですが、その方に、「こういう勉強をしておいたら役に立つ」ということはありますか?


河本 そうですね。もちろん、脚本形式の原作でもいいんですが、「ネームを描けた方が有利」というのは、よく聞きます。
だから、下手でも「漫画を描いてみる」といいんじゃないかなと思います。
ペン入れまでする必要があるかはわかりませんが、ネームを描いてみて、ネーム賞に送るというのを繰り返してみる。もし意見が欲しかったら、「出張編集部」などに行けば無料で見てもらえますので、編集者の意見を聞きながら直していく、というのを繰り返すのが、一番の近道なんじゃないかなと思いますね。
これは自分の個人的な意見ですが、ネーム原作だと、漫画の「めくり」や「引き」を自分でコントロールできる。僕はネームを描きながら、ここは絶対この「めくり」にしたいから、数ページ前からコマ割りを調整する、といったことをよくします。脚本形式の原作だと、このへんが難しいと思うので。


――漫画原作者はとは、漫画の現場にとっては、どのような存在なのでしょう。


河本 偉そうなことをいうようですが、個人的な感覚としては、僕がやっていることは「素材の提供」ですね。それを、作品に昇華してくれるのは漫画家さんなので。全て自分でコントロールしたいとは、思っていないですね。
だから、漫画原作者になろうとしている人へのメッセージとしては、「原作者は作品をコントロールしようとするな」ということ。
 あとは、自分が面白いと思うことを書けばいいんじゃないかと思います。


佐々木 ネーム原作者は「絵が凄い」という評価をされることがない以上、作画を含んだ漫画家よりも、絶対に、「面白さに対する裏付けの強度」を求められるんです。


河本 僕自身もそうなんですが、「絵が描けないから原作者になる」という消極的な選択だけでなく、「絵が描けない」からこそ、同じ賞に投稿している、ちゃんとした作画をしている人の作品よりも、話が面白くないと、絶対にデビューできない。そこは意識しておかないといけないと思いますね。入り口は「漫画家になれないから」でも全然いいのですが、他よりも上回らなきゃいけないこともある、ということです。


――今後「漫画原作者」は増えてくると思われますか?


河本 一般論ですが、作画コストが上がりまくっていますから、原作を別に考える人がいて、1ヶ月全てを「漫画を描くこと」と「話を考えること」とそれぞれがフルに使えるというのは大きいんじゃないでしょうか。
 あと、絵が上手くなくても話が面白い人は絶対いるので、そういう人にとっては漫画原作者というのは《希望》だと思います。


――では、最後にファンの方へのメッセージ、告知などありましたら。


河本 おかげさまで、これだけたくさん、長く続けられて、本当にありがたいです。また、アニメの二期もありますが、今後もいろいろ展開していくと思います。これからも、「出し惜しみなし」で描き続けていきますので、次の巻も面白いはずです(笑)。
ぜひ、宜しくお願いします。


――ありがとうございました。(2018年3月27日 スクウェア・エニックスにて)


河本 ほむら(かわもと・ほむら)
漫画原作者。富山県生まれ。某大学法学部卒業後、某法科大学院に進学。卒業後、司法試験合格。2013年に「ガンガンJOKER新人マンガ賞」ネーム原作部門で奨励賞受賞。 代表作は、シリーズ累計200万部以上、アニメ化・実写ドラマ化もされた『賭ケグルイ』やそのスピンオフ『賭ケグルイ双(ツイン)』『賭ケグルイ(仮)』(以上、スクウェア・エニックス「ガンガンJOKER」連載)、『賭ケグルイ妄(みだり)』(スクウェア・エニックス「マンガUP!」連載)、『異世界法廷~反駁の違法弁護士』(KADOKAWA「ヤングエース」連載)、『文武両闘 最強才智の育て方』(KADOKAWA「電撃マオウ」連載)、『煉獄デッドロール』(KADOKAWA「ドラゴンエイジ」連



漫画原作者に聞く! 河本ほむら氏インタビュー [その1][その2]



(取材・構成:山科清春)


バックナンバー
 漫画原作者に聞く! 第1回 リチャード・ウー(長崎尚志)



【2018/05/22】

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