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【インタビュー】藤田和日郎、皆川亮二、島本和彦......! 漫画と漫画家を《徹底解剖》するシリーズ『漫画家本』! その「ねらい」と「読みどころ」を責任編集者と担当編集者に聞く!(その2)

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人気漫画家とその作品について《徹底解剖》するシリーズ、『漫画家本』が刊行!


コミスンでは、『漫画家本』の責任編集である三上信一・小学館第4コミック局プロデューサー兼コミックス企画室室長(『アオイホノオ』の焔燃の初代担当としてもおなじみ!)と、その『漫画家本』の第1弾『藤田和日郎本』・第2弾『皆川亮二本』・第3弾『島本和彦本』の編集・構成を担当されたライターの島田一志氏に、『漫画家本』の「ねらい」と「読みどころ」などのお話を伺いました!


インタビュー前編に続き、後編では三上氏、島田氏が実際に担当した『漫画家本』3誌それぞれの「読みどころ」と、シリーズの今後の展望について語っていただきます。



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『藤田和日郎本』......「ありそうでない、ギリギリのラインを狙いました」


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『うしおととら』の藤田和日郎を大特集。「仕事場紹介」では気になる本棚の写真も大公開。超ロングインタビュー。北鎌倉の澁澤龍彦邸訪問記。斎藤宣彦、藤津亮太、東雅夫らによる作品論。傑作『美食王の到着』再録(カラー部分はそのまま再録)。夢枕獏、小畑健、高橋葉介、島本和彦ら豪華ゲストも参加!


――『藤田和日郎本』のオススメのポイントをお聞かせください。


島田 基本的にはどの『漫画家本』もインタビューが読みどころなんですが、藤田先生の本だと、「澁澤龍彦邸訪問記」も見てほしい。


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取材先として、これまでにありそうでない、ギリギリのラインを狙いました。たとえば、「江戸川乱歩の蔵」とかだと、藤田先生のファンはイメージしやすいかもしれない。近い読者層なんだけど、今まで絡んでなかった人を結びつけるっていう感じを狙ってみました。もし、澁澤先生がご存命だったらベストだったんですけど、幸いご邸宅がそのまま残っているので、藤田さんに訪ねていただきました。


――確かに、藤田先生の作品の読者と親和性が高いですね。この本を見て、澁澤龍彦の本を手に取る人もいるかもしれません。


島田 そうなんです。そういうふうに、作家から別の作家へと、読書の世界をひろげるお手伝いをできたらな、と思っています。


――ロングインタビュー(3万7千字!)も圧巻で、感動を覚える言葉や、思わずメモしたくなるような名言が多かったです。


三上 それは、インタビューを1日でやっていなくて、3、4回に分けてやっているからじゃないでしょうかね。


――なるほど。次のインタビューで言うべきことが整理されて出てきているのかもしれませんね。掲載されている短編「美食王の到着」も鬼気迫る名作ですね。


島田 あの作品は、数多い藤田先生の傑作短編の中でも、とびきりおもしろい一作。超現実的な表現と、普遍的な物語のおもしろさが両立しています。


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『皆川亮二本』 沈黙を破って語り始める!


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ご好評いただいている「漫画家本」第2弾は、『ARMS』『スプリガン』の皆川亮二先生を大特集します! 今回もロングインタビューや作品の秘密がわかるアイデアノート&ラフスケッチを掲載。最新作『海王ダンテ』特集。また、幻のデビュー作「HEAVEN」を完全版として再録。そして、浅田弘幸、三原ミツカズ、松本次郎、押切蓮介、三輪士郎各先生によるトリビュートイラスト企画など、盛りだくさんの内容となっております。


――『皆川亮二本』の見どころはいかがでしょう? 皆川先生のインタビュー(4万7千字!!)は、これまであまりなかったかと思いますが......。


島田 メディア露出の多い藤田先生や島本先生と違って、皆川先生は、これまで断片的には語られたことはあるにしても、顔出しして、ここまでがっつりと語ってくれたのは今回が始めてじゃないですかね。


三上 私が編集長の時は、皆川先生は「漫画家は言葉で語るものではない、漫画で語れば良いんだ」と言っておられましたので、取材を受けてもらえるかが心配だったのですが、文庫版とかワイド版の企画でちょこちょことインタビューや対談をしていただいて、今回、ちょうどご本人がそろそろ自分の言葉で語ってもいいかな、と思い始めたタイミングで、お話を伺うことができたんじゃないか思います。語り始めたら、本当にたくさん語っていただけましたね。


島田 毎週、週一でインタビューをさせていただいてましたよ。


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――他にも、見どころたくさんですが...特にイチオシは......。


島田 皆川先生のデビュー作「HEAVEN」の再録でしょうか。これは多分、10年前だったら、はずかしいからと出していただけなかったと思います。インタビューもそうですが、実績とか、自信とか、年齢とかを重ねられて、そういうのをさらけ出してもいい年齢になられたんだと思うんです。このデビュー作は、今読んでも全然クオリティが高いですが。


――とてもデビュー作とは思えませんね。


島田 そうですよね。皆川先生はアシスタントを経験されていることもあり、この作品は「背景が主役」だとおっしゃっています。キャラだけでなく、そちらもじっくりと見ていただきたいですね。



『島本和彦本』......「みんな島本先生が好きなんだなあ」


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『炎の転校生』『アオイホノオ』の島本和彦を大特集。「仕事場紹介」では気になる本棚の写真も大公開。超ロングインタビュー。手塚眞との熱血対談。仲俣暁生、伴ジャクソン、泉信行らによる作品論。羽海野チカ、藤田和日郎、浅田弘幸ら豪華ゲストも参加!


――続いては、第三弾『島本和彦本』ですが...。


三上 この『島本和彦本』は苦労しましたね。まず、どんな企画をやるかに苦労した。


島田 そうですね。「どうしてあの作品評が載っていないんだ!」というファンの方もいらっしゃると思うんですが、紙幅のせいもあって、思い切って、『炎の転校生』と『アオイホノオ』に絞りました。そこに不満がある人もいると思いますけど、逆にインタビューの方で、ご苦労されていた時代のことなども補ってもらったつもりではいます。


――島本先生を語るには、やはり小学館を出られてからの「逆境」の時代を語ってほしい...という気がしますね。


島田 普通の漫画家は、とても苦しかった時代のことを、語りたがらないものですが、島本先生から「むしろ、聞いてくれ」と言われたんです。だから、面白い感じで語っていただいています。


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――島本先生がパーソナリティをされていたラジオの誌上再現などもありますね。


島田 島本先生の方から「漫画家以外の顔も取り上げて欲しい」と言われましたので。実は島本先生は評論家としてもすごいというのがわかると思います。


――今回のインタビューも結構なボリュームですね。


島田 島本先生は北海道在住なので、一度お仕事場へうかがったほかは、上京のタイミングをつかまえたりして(笑)、お話をお伺いしました。


――珍しく少年時代のことも語っておられますね。


島田 少年時代の話はけっこうレアかもしれない。


三上 おそらく、それは初めてじゃないかな。


島田 あと、高校時代に『宇宙戦艦ヤマト』のデスラー総統のマネがウケてたとネットの情報では書かれていたのですが、実は全然ウケていなかったことが判明したりとか(笑)。それはともかく、ゲストの方々の原稿を読んでみて、みんな、島本先生のことが本当に好きなんだなあということがわかりました。



気になる、今後のラインナップは!?


――現在、ここまで紹介した3冊のほかに、三上さん・島田さんとは別のチームによる『松本大洋本』、『吉田秋生本』が出ています。また、予告によると『あだち充本』が2018年発売となっていますが、こちらはいつごろの発売になる感じでしょうか?


三上 まだわからないですね。『あだち充本』は、責任編集は私ですが、編集作業は島田君ではなく、別の人が進めていますが、インタビューがすごいんです。これまでのあだち先生関連のインタビューすべてを凌駕するほど、話を聞いていますね。あだち先生が「まだやるの」っていうくらい。


――ほかに、企画進行中の漫画家の方はいらっしゃいますか?


三上 あだち先生と平行して準備しているのが、島田君と進めている河合克敏先生と細野不二彦先生ですね。こちらもまだ取材を始めたばかりなので、いつ出るとはいえないのですが。その他にも、現在、取材OKをいただいている方が何人かいますので、今年4~5冊出せたらうれしいですね。


――楽しみですね。資料性の高いシリーズとして今後もどんどん続いて出たら、BOX(化粧箱)も欲しくなりますし、書店の書架に『漫画家本』がズラッと並ぶのが楽しみですね。


島田 そうなるといいですね。



「ヨイショ本」ではなく、漫画読みのための「ガイドブック」に


――『漫画家本』は大人だけでなく、たとえば少年少女が手にとっても、面白く読める本になっていますね。


三上 基本的には「大人の活字本」として作っています。小学館が普通にこういう本を作るとすると「漫画がいっぱい入っていて、少年少女も読めて」といった感じになっちゃうんですが、あえてルビも振ったりはしていません。でも、少年少女にも、少し背伸びして、ぜひ読んでもらいたいですね。手にとってさえもらえれば、絶対に面白いと思うので。


島田 この本が漫画に強い出版社から出ているということには、良い面と悪い面があると思うんです。悪い面というのは、いわゆる「ヨイショ本」になってしまうおそれがあるということなんですが、そうなるとつまらない本になってしまうので、執筆陣には、厳しい目で評論・批評してもらい、インタビューでも聞きづらいこともなるだけ聞いていけるようにしたいと思っています。良い面としては、この著者に興味を持っている人に、わかりやすい文章や論旨でいいトスを上げることができているということだと思います。


――確かに、『漫画家本』を読んでいると、「次はこれ読んでみよう」と未読の作品を読んだりするきっかけにもなりますね。


島田 僕が他社で作っていた本は、けっこう学術的な感じだったのですが、この『漫画家本』が目指しているのはそこではありませんので、執筆者の方には、あまりアカデミックな方向にせず、「印象論」になってもいいから、読んだ人が面白く読めるものをお願いします、といった感じで依頼しています。やっぱり、すごい知識があったり、考え方が面白い人が書く印象論って、面白いと思うんですよ。


――『漫画家本』では、作者の先生方が影響を受けた作品や作家なども紹介されていて、興味の幅がどんどん広がっていきますね。


島田 そうですね。「作品と作者自身は別のものだ」という考え方が評論の世界にはあるのですが、それはちょっと違うんじゃないかなと考えているんです。もちろん、漫画も小説も「読んで面白い」というだけで十分ですが、その裏には「作者がその時、どのようなことを考えていたか」とか「同時代に何が起きたか」「作者はどんなものに影響を受けたか」といったことが、反映されていると思うんですね。視点を変えて、別の方向から作品や作家を見ることで、「作者は表面的なこととは別のことを描いているんじゃないか」といった「謎解き」のような読み方ができれば、もう一度、秘められた面白さを味わえるんじゃないかと思うんです。

 それは、押し付けるわけではなく、一つの読み方として、こういう風に読んでも面白いんじゃないか、というのをアピールできればいいかなと。たとえば、藤田先生の『うしおととら』は「妖怪退治の話」の裏に、別の「戦い」を描いているかも知れないし、皆川先生の作品の「すごい力を持ってしまった時、君ならどうする?」といった問いかけは、自分の日常とも照らし合わせることができるかもしれない。そういう別の読み方の「ヒント」のようなことを、この『漫画家本』から読者の方が感じてくれるといいんじゃないかなあと思います。ですので「その作家が何に影響を受けたか」などは、がっつりと掘り下げているつもりです。


三上 島田君が作った本に関しては、彼がそういう風に読んで欲しいというのであれば、そうなればいいと思っています。作家でも、一人一人に「個性」があるように、『漫画家本』にも、その編集担当に合わせた「個性」があっていいと思っています。


島田 うまい言い方かわかりませんが、『漫画家本』は評論本というよりは「ガイドブック」みたいな感じにしたいんです。もちろん批評はするんですが、押し付けがましいわけじゃなくて、こういう読み方もありますよ、という。先程も同じようなことを言いましたが、読者の方が、先生方が挙げている映画や本などに興味を持って、観たり読んだりしていただけると、嬉しいですね。


三上 あとは、責任編集の立場から言うと、他社がやった特集などでは、登場人物の名前を間違えられたりといったことがたまにあるんですが、小学館で出している以上は、原則としてそれは許されない。まあ、それでも間違いはゼロにはならないんだけど、でも「間違いは許されないんだぞ」と思いながら、「公式資料本」としてもちゃんと作っているつもりですから、そのあたりも見て欲しいですね。
 『漫画家本』の評論とインタビューの記事は、誰が見てもいいものだと思うので、あとは、それ以外の、作家と深いつながりのある小学館が出しているというところからくる「作家への感謝や応援の気持ち」みたいなのが、ところどころに入っているのを感じていただけたら、すごくうれしいです。続刊もご期待ください。〈2018年2月19日小学館にて〉


『漫画家本』スタッフインタビュー [その1][その2]


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小学館の『漫画家本』シリーズは絶賛発売中です!!




(取材・構成:山科清春)

【2018/03/31】

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