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『ムシヌユン』都留泰作&『海獣の子供』五十嵐大介、史上初の特別対談!【コミック試し読みあり】

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『ムシヌユン』特別対談!!


スペリオールで『ムシヌユン』を連載中の都留泰作氏が、昨年発売された『文藝別冊・五十嵐大介』(河出書房)へ寄稿したことをきっかけに、この度「以前から一度会いたかった」と互いに気になるふたりの漫画家の対面が実現! 漫画のモチーフから表現方法まで、ちょっと特殊な想像力の持ち主ふたりによる対談をお届けします!!


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生い茂る漫画の「想像」力!!!


五十嵐 論文(※)送っていただいてありがとうございました。凄い面白いです。あれ、イラストも全部都留さんの自筆なんですか?


都留 そうです。あの論文、いまいち評価されなかった......。


五十嵐 え! なんで。こんなに面白いのに。


都留 研究の潮流として時代遅れな部分があるんですよね。文化人類学の研究も、最近は開発とか、あるいは植民地化の歴史を文献から解くとか。やっぱりだんだん現代的な部分になるべく寄せる傾向があって。あまり大昔のことを描いても、まだそんなことやってるの? っていう雰囲気があるんです。


五十嵐 でも大昔のことって、やりつくされてるわけじゃないですよね。


都留 全然そんなことはないです。なくなっちゃう前に、そういう研究をもっとやってもいいのにな、って思う。



※論文
都留氏が事前に五十嵐氏に送った論文は『カメルーン、狩猟採集民バカの精霊パフォーマンス とくに精霊のキャラクター表現についての考察』『バカ・ピグミーの精霊儀礼』ほか、全4点。いずれも都留氏の研究対象である、アフリカ・カメルーンの狩猟採集民族を研究対象としたもの。

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都留氏自筆のイラスト



五十嵐 都留さんが研究したバカの儀礼とか、例えば沖縄の八重山の豊年祭とか、時や場所を超えて踏襲される儀礼イメージってあるじゃないですか。もしかしたらそれが人間の発想力の限界を示してるのかもしれないけど、そこから色々発想できそうだけどな。漫画的な話として。


都留 起源が同じなのか、それとも人間の発想って結局同じなのか。面白いはずですよね。


五十嵐 僕なんかは漫画家だから、当然、たとえば(儀礼に登場する)ツノが生えてるようなものが実際にいたに違いない、って考えちゃう。


都留 え、現実にですか! 僕は〝よくて幻覚だろう〟と(笑)。幻覚のパターンがあるんだろうな、と。


五十嵐 人間の発想する脳の鋳型みたいなものがあって、そこに当てはまっちゃうんだろうと?


都留 そうそう。僕はそんな感じですね。


五十嵐 でもそこをもうひとひねりして。その鋳型は宇宙人に植え付けられた! とかね。


都留 そういうほうがお話としては面白くなりますよね、絶対。


五十嵐 とかいって〝誰かやらないかな〟って思ってる。都留さんとかが(笑)。漫画ならではの表現で。映像化は簡単にできないようなね。そういう漫画が描ければいいんだけど。『海獣の子供』(※)なんかはどちらかというと、僕は都留さんの『ナチュン』に登場した【デュラム・ビデオ】(※)みたいなものを描きたかったんですよ。ただ、そのまんま描いても誰も読んでくれないだろうと(笑)。だからオープニングに〝物語〟を付けた、という構成なんです。


都留 僕は『海獣の子供』のようなビジョンを描く才能は、自分にはないと思っていて。【デュラム・ビデオ】という存在を作中で登場させながら、実はその中のイメージは全然描いていない。凄いビジョンが浮かんでこない。だからそういう部分に憧れるというか、発想が貧困だから、なるべく具体性で固めていこうという感じですね。



※海獣の子供
五十嵐氏初の長編作品で代表作のひとつ。とある港町と水族館を舞台に繰り広げられる、少年と少女の幻想的冒険譚。単行本全5巻。


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※デュラム・ビデオ
都留氏の前作『ナチュン』に登場するビデオ。内容は、天才だが左脳を失ったデュラム教授が数学の論文として提出した、イルカを延々と撮影しただけの映像。だが、主人公はそこから大きな啓示を得る。



――【デュラム・ビデオ】の外側の世界を描く都留さんと中側の世界を描く五十嵐さんの違い、かもしれませんね。五十嵐さんは漫画の絵として、理想に近づいているという感覚はあるんですか?


五十嵐 僕は絵としての理想ってあまりないんですよ。あえて理想、っていえば無個性な絵が狙いなんです。


都留 無個性な絵ですか!?


五十嵐 だから〝ひと目で五十嵐さんって分かりますね〟と言われるとショックなんです、僕としては。写真みたいな、っていうと変ですけど〝誰が見てもこう見えるはず〟って思って描いてるのに。


都留 それは意外な感じがしますけど。


五十嵐 僕の中でもリアリティというか、本当に地続きの世界で起こっている感じにしたいから。でも、できてないらしい。


都留 それはそう見えないと思う。もちろんベースに凄いリアリティがあるのは分かるんですけど、それを加工してる感じがする。完全に心の目で。


五十嵐 結局、そこまで理詰めに持っていけないんですよね。感覚先行で描いてるから。だから都留さんの漫画を読んでると、頭のいい人っていいな、って思う。理屈で伝えなきゃいけない部分と、感覚の部分、両方できてる漫画だから。


都留 できてるのかなあ。でも理屈をこねるのは、論文を書いたおかげでできるようになった。それでも他の研究者に比べると感覚的なんでしょうけど。


五十嵐 ジェンダーに対する偏見を多分に含んでるような気がするけど、僕はなんとなく、女の人の描く漫画のほうが面白いんですよ。理屈じゃない、もう一個超えた漫画表現の伝え方っていうのができてる気がする。〝それでちゃんと伝わるんだな〟っていう衝撃がよくあるんですよ。男の人の場合、ある程度、理屈に起こして漫画にしているというか。


都留 それはありますね。感覚の部分は女性のほうが強靭というか。幻想かもしれないけど、女性のほうが深く色んなことが分かっちゃうんだろうな、って。五十嵐さんの漫画って、男性なんだけど、女性の感覚を突き詰めていきたいっていう欲望を凄く感じますね。


五十嵐 そうでありたいという憧れはあります。


都留 僕はそこは完全に諦めてるんで(笑)。『ムシヌユン』も完全に女性〝への〟幻想、男の性欲を描く、という。


五十嵐 それで正解じゃないですか! このヘタレ感って感動的ですらありますよ。内面的にはこういうところが誰にもあると思う。共感できる。


都留 最も自分に近い主人公というか......僕も内気なタイプなんで。


五十嵐 そうなんですか!? フィールドワークをしていた割に。


都留 向いてるわけじゃないんですよ。ただやりたかったから、無理矢理やってただけで。


五十嵐 そういう体験があると、図太さじゃないですけど、たくましさが身に付くんじゃないんですか?


都留 いや、あまり身に付かない。逆にひどくなりました(笑)。人間って難しい、って感じがどんどんしてくるというか。


五十嵐 アハハハ! 『ムシヌユン』是非最後まで描ききってください。何があろうとも。お願いします。


都留 ありがとうございます。





「『ムシヌユン』ってどんな話?」という方のために、担当編集おすすめの「第3話」試し読みをご用意いたしました!


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《プロフィール》

20150213_mushitaidan_4.png五十嵐大介 Daisuke Igarashi
1969年生まれ。93年、アフタヌーン冬の四季大賞にて『お囃子が聞こえる』が四季大賞を受賞し月刊アフタヌーンでデビュー。翌年、同誌にて『はなしっぱなし』の連載を開始。04年『魔女』、09年『海獣の子供』によりそれぞれ文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞。


20150213_mushitaidan_3.png都留泰作 Daisaku Tsuru
1968年生まれ。94年、京都大学理学研究科動物学専攻修士課程修了。翌年、狩猟採集民バカを対象とした調査のためカメルーンへ。01年、博士(理学)を授与される。富山大学人文学部准教授を経て、現在、京都精華大学マンガ学部准教授。漫画作品に『ナチュン』(全6巻/講談社)。



『ムシヌユン』待望の単行本第2集は、2015年4月末日頃発売予定!!!
雑誌掲載時から超大ボリュームの加筆修正!
一体どのような衝撃が待っているのか......乞うご期待!!



(ビッグコミックスペリオール編集部)

【2015/02/13】

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海獣の子供 1
五十嵐大介

ムシヌユン 1
都留泰作

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