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【新連載】『天そぞろ』原作者・あかほり悟インタビュー<後編>【いま浮世絵が熱い!!】

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『サクラ大戦』シナリオ、『セイバーマリオネットJ』などアニメ、ゲーム、マンガ、小説で数々のヒット作を持つ作家・あかほりさとるが、名義を「あかほり悟」にあらため、「クピドの悪戯」シリーズほか、数々の名作を手がけてきたマンガ家・北崎 拓との強力なタッグで、新作『天そぞろ』の連載をスタートさせた。


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「ビッグコミックスピリッツ」の思い出、本作が生まれるきっかけ、歴史ものにかける思い、そして、自身の人生について、出版業界のこれからについて思うこと......作家としての「新生」を、インタビューでざっくばらんに語ってもらった。


 時代の寵児は、今、こんなことを考えている......!


『天そぞろ』あかほり悟インタビュー [ 前編 ] [ 後編 ]



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[インタビュー前編からの続き]


――幕末という時代にはどんな思いを持たれているんですか?


 そもそも歴史が好きなんですが、幕末は特に現代と通じるカオス(混沌)な時代なんですよね。自分なりに「幕末とはこういう時代だった」という解釈が持てないうちは、関わっちゃいけない時代だな、くらいのイメージがあります。これまでも興味を持って調べてきていましたが、この作品を書くにあたって、ようやく自分なりの解釈が見えてきたんです。これなら、書いてみてもいいのかな、と。だから、これまで描かれてきた作品と、またひと味違った「幕末」像がお見せできるんじゃないかなと、自負しています。先行した企画とどう差別化していくか? というところには、作り手としての覚悟を持って臨んでいますよ。


――幕末の中でも、「安政七年(1860年)」から物語を始められた理由はなんなのでしょう?


 「桜田門外の変」を冒頭に持ってきたかったんです。ペリー来航によってそれまでの日本の秩序が崩れ始めたという説がよく語られると思うんですが、僕の考えでは、秩序の崩壊は桜田門外の変からなんですよね。
 タイムスリップというのは、自然界の秩序を崩す現象じゃないですか。そういうこともあって、この作品では、秩序が崩れていく様を描いていきたいなという気持ちがあるんです。「桜田門外の変」から幕末の動乱までは、まだちょっと時間があるんですけど、そのあたりは上手いこと書けたらよいなと思っています。



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――主人公の源吾が絵師というのは、『御用絵師一丸』の主人公である一丸とも共通しますね。


 一丸は肉筆画の絵師で、源吾は浮世絵師。浮世絵師は肉筆画も描くけど、主に版画が中心なので、そこは違うんですけどね。
 浮世絵師はもっと評価されていいなというか、世界では評価が高いけれど、日本国内では浮世絵の評価がそんなに高いとは思えないんですよね。だからもっと評価されてもいいよなという気持ちがあるのと、あとは、なんていえばいいのかな......僕は字書きですけど、マンガとか、アニメーションとか、絵に関する仕事に携わってきた人間なんです。そういう人間として、当時の大衆の絵やメディアに関っていた人物を主人公にすることに、すごく魅力を感じたんです。言ってみれば、当時の浮世絵師は、現代のマンガ家にあたる仕事なわけじゃないですか。だから浮世絵師と現代の僕らで、仕事への意気込みには共感するものがあるんじゃないかな、なんて、勝手な思いがあるんです。北崎先生もこの企画に乗ってくれたのは、そこを感じてくれたからだと思いますね。
 「スピリッツ」は、そもそも土田世紀先生の『編集王』とか、『サルまん』(作・竹熊健太郎、相原コージ)とか、マンガに関する仕事を題材にした作品が多いんですよね。『重版出来!』(松田奈緒子、「月刊!スピリッツ」連載」)も人気があるし。


――言われてみれば。つまり、その伝統に則った企画でもあるわけですね。


 ......ということにしておこうかな(笑)。


――時代を超えたシンパシーみたいなものを、「絵師」という仕事に感じている?


 偉そうですけどね。でも、絵とか字で飯を食っていた人間が昔もいたというのは語っておきたいんですよね。特に今、出版業界は革命が起こっているわけじゃないですか。出版不況だと言われていて、売れるものと売れないものの落差は激しくなっているし、電子書籍もどうなるかわからないし、著作権の考え方も大きな変化を迎えるかもしれない。革命が起こっている状況だからこそ、絵とか字で飯を食う人間の矜持みたいなものを、江戸という時代に置き換えて描いておきたいな、と。そんなことを考えたところはありました。



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――ヒロインの楓の造形も印象的です。


 まず背が大きいですからね。この時代って、日本は鎖国してましたよね? その結果、「島嶼化(とうしょか)」(※物理的に孤立した島で、資源や生息できる土地が制限されるため、生物が他の地域で見られるよりも巨大化あるいは矮小化する現象)に近いことが起こったのか、この時代の日本人は、日本史上もっとも平均身長が低いんですよ。戦国時代なんかはもっと大きいし、明治に入ると、食事が西洋化したせいか、どんどん大きくなるんですけど。


――ああ、それで現代から来たヒロインの身長が大きいんですね。性格も個性的というか、少し怖さを感じる女性です。


 それはいきなり江戸時代に一人でやってきて、強がって生きていくほかないところもありますからね。でも裏に回ると、弱いところがいっぱいある女性です。先の展開では、そんなところも見せていけるかと。女性の読者にも共感してもらえるキャラクターに楓を造形していきたいと思っています。


――新境地もたくさんですが、一方で、これまでのあかほり作品らしさを感じるサービスシーンも盛り沢山で。


 これはね、もちろん原作でも入れたんですけど、北崎先生が上手すぎるんですよ(笑)。北崎先生の見せ方というのは、あらためていうこともないのかもしれませんが、やっぱりすごく上手い。これだけベテランの、ビッグネームの先生と組ませていただけるということで、ネームでも原稿でも感動してますよ、本当に。



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――では最後に今後の展開のみどころを。


 いちばんのみどころは、幕末の名のある人物たちが、どういう解釈で描かれ、どのような形で楓たちと関わって行くかだと思います。話の始まりからその片鱗は感じらていただけたんじゃないかと思いますが、僕なりの歴史の解釈を「おお?!」と驚いてもらえるか、「ふーん、こんな感じか」で済まされてしまうか。自分としても楽しみにしています。
 そしてやはり、楓と源吾、ふたりの主人公の恋愛がどうなっていくのか。少しずつ動いていく関係も楽しんでいただけたら嬉しいですね。よろしくお願いします。



『天そぞろ』第1話(60ページ)第2話(34ページ)をコミスンでまるごと試し読み公開!
あかほり悟×北崎 拓、話題の新連載をぜひご覧ください!



『天そぞろ』あかほり悟インタビュー [ 前編 ] [ 後編 ]


『天そぞろ』試し読み [第1話][第2話]



(インタビュー・構成:前田 久)

【2015/05/28】

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