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【新春企画】高橋しん 新連載『かなたかける』スタート直前!インタビュー(その1)【1月4日発売「スピリッツ」6・7合併号より連載開始】

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1月4日(月)発売の「週刊ビッグコミックスピリッツ」6・7合併号からスタートする新連載『かなたかける』。「スピリッツ」で『いいひと。』『最終兵器彼女』などの大ヒット作を手がけてきた高橋しん氏の新作は、箱根を舞台に駅伝にかける少年少女の青春を描く「駅伝ロマン」!
自身も山梨学院大学の選手として、第63回箱根駅伝の最終10区を走った経験がある高橋氏に、箱根駅伝翌日にスタートを切る新連載への意気込みをコミスンが独占インタビュー!!


新春特別企画として1月1日から3日まで連続掲載! 新連載スタート前に、第92回箱根駅伝と合わせてお楽しみください!!


『かなたかける』高橋しん氏インタビュー [その1][その2][その3]



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――「週刊ビッグコミックスピリッツ」6・7合併号から新連載『かなたかける』がスタートします。高橋しん先生のファンとしては、満を持しての「駅伝もの」が来た!という感じですが、今回、駅伝を描こうと思われたのはなぜですか。


最初は、駅伝かマラソンか忘れてしまったのですが、テレビで頑張って走っている人の姿を見た時に、ぽろっと「ただ単純に一生懸命走ってる女の子を描いてみたいな」と思ったのがスタートです。作品として考えていく内に、駅伝というファクターが出てきました。駅伝は駅伝で、いつか描くだろうなとは思っていたのですが、基本的には「一生懸命走る姿」がスタートですね。


――主人公のかなたの様に、頑張って走る女の子の姿から作品が生まれたんですね。


シーンとか台詞とか、ちょっとした漫画としての短い一連の流れがなんとなく頭に浮かんで、「ああ、こういうのを描きたいな」と思ったのですが、メモを取らないタイプの漫画家なので、あれ覚えておけばよかったな......と(笑)。基本的には「単純に一生懸命やっている姿は理屈じゃなく人を熱くするものがある」という、単純なところをやってみたいと考えています。


――箱根駅伝に選手として出場した先生が、これまで本格的に「駅伝もの」を描かれなかったのはなぜですか?


父が駅伝好きで、物心ついた頃から朝6時に起きて2人の兄と一緒に走って、寝る前には腕立て腹筋ということをやらされていて、その頃から考えると、すごく長い間、陸上をやってきました。大学進学も、箱根駅伝出場を目指す新しいチームがあるから、そこでチャレンジしないかと勧められて決めたのですが、当時はまだ箱根駅伝のテレビ放送もなく、駅伝マニアの父が聴いていたラジオ実況から想像するしかない世界。「すごい駅伝の大会らしい」というだけで入学してみたら、すごく難しい大会だとわかって。箱根に出場するまでの1年間は、駅伝のことしか考えてない大学生活で、4年間、気持ち的にも身体的にもこれ以上はできない、というところまで必死にやったので、正直、卒業してからは駅伝のことを考えるような気にならなかったんです(笑)。



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――駅伝については、心身ともにやりきった状態だった、と。


私は就職活動が漫画を描くことで(笑)、意識も完全に漫画のほうを向いていたのですが、自分の中で箱根を走ったというプライドはあったので、それを心のプラスにするつもりでやっていました。箱根駅伝も、自分はファンではなくプレイヤーだという意識があったので、自分が出ていない箱根駅伝を観る必要もないと。『いいひと。』を描いている頃もまだテレビ観戦もしていなかったのですが、報知新聞さんからイラスト付きで観戦記を書かないかという話をいただいて、いい機会だなと思って。仕事だから観るということで、やっと箱根駅伝に向き合えました。自分の中で、漫画を描くというのは、読者さんに気持よくなってもらえる「嘘」を描くことなので、箱根駅伝がリアルすぎて自分にとっての「嘘」のカテゴリに入ってこなかったんです。


――フィクションとして扱うには、自身の体験としてまだ生々しすぎたんですね。


今でも箱根駅伝を観ていると、実際に走っている選手は自分よりもずっと速い人ばかりなのに、「なんでここでもっと頑張らないのか!」みたいに思うことも多少ありますが、だいぶファン的な気持で、「がんばれー」という感じに応援できるようになってきたので。


――ついに時が来た!という感じで。


駅伝の知識的なものは、だいぶ古いものになってはいますが、二本の足で走ってタスキを繋いでゴールにたどり着くという、単純なところは不変なので、細かい部分は勉強していけばいいかなと思っています。走者としてのメンタルの部分は、アドバンテージになるんじゃないかと思っているので、興味をもって読んで頂いた人の期待を裏切らないものを描ければいいなと。


――1話、2話を読んでみて受けた印象としては、画面の明るさというか、キラキラした感じが気持ちいいです。


小学生編から始めるのもそれを目指していて、子どもが無条件で楽しい表情をしていれば見ている側も素直にいいなと思えるので。画面の感じも意識して、あまり濃くならないように、まぶしさと表情を中心に見てもらえるように寄せていこうと。まだ雑誌の状態では見ていないので、これから本誌をみながらなるべくシンプルに明るい画面にしていきたいと思っています。



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――[編]最初にお話を伺ってから、夏ごろまでかけて形にするのにだいぶ時間がかかった記憶があります。


いまは10話までネームを描いていますが、やはり駅伝を描くのは難しいなと。順番にタスキを繋いでいくので、主人公以外の人が走っている時間があるというのも含めて、画面の作り方や構成は、試行錯誤しながらチャレンジしていくしかないと思っています。でも、駅伝をテーマにした作品はたくさんあったと思いますが、これまでとは違う新しい形を読者さんに見せられるんじゃないかと、わくわくしながら描いている感じですね。


――駅伝ものとなると、いわゆる「スポ魂」的な印象の漫画になりそうですが、序盤を読ませていただいた限りでは、そういう手触りは感じませんでした。


「駅伝」というジャンルに興味のある読者さんも、ない読者さんいると思いますが、最初はそういう固定イメージから入るのではなく、とにかくひたすら前を向いて走るという、理屈じゃないところを描きたかったので。スポーツには色々ありますが、「ただ走り続けること」は才能やセンスとは関係なく追求することができる。誰かと比較するのではなく、自分がいける所まで走るという部分に何か感じてもらえる余地があるんじゃないかと。いきなり駅伝をやれ、といわれて「よしやってみるか」というのはハードルが高いですし、読んでいて、自分もちょっと走ってみたいなとか、そういう気持を感じてもらえる漫画にはできるんじゃないかと思っています。


――小学生編から始まるのも、競技としての駅伝とは関係ないところで、ただ走ることの根源的な楽しさを描きたいということに関係しているわけですね。


元々、少年漫画として企画していたこともありますが、たとえ足が遅くても、誰もそこまでは走れないよ、という所まで走ることができれば、それ自体が才能になるかもしれない。それは健康で走ることができる人なら誰でもチャレンジすることができるというのを目指したいな、と。実際に走ってみると、結構大変なんですけど、テレビでマラソンとかを観ていて、気持よさそうだなと思う人は少なくないと思うんですよね。


――実際、最近では市民マラソンに参加したり、ジョギングを趣味にする人も増えていますよね。


ある陸上コーチが書いた本の中で、「気持ちのいい所で走ること」を練習の基本にしているんです。
「ハードな練習をしなければ」ということから入っていたトレーニングを、そのコーチは、まず「走ることが気持いい」ということから入って、それを繰り返すうちにスタミナもついてハードな練習ができるように育てられると言っていて。「気持ちよく走れる時間をどんどん長くしていくことは、人間の構造的に理に適っている」と書かれているのを読んで、これまで理論的な裏づけではなく、自分の気持ちで描いていた部分が間違いではなかったんだと思いました。



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――趣味で走っている知人を見ても楽しそうで、昔と比べて「走る」ことの捕らえ方が変わってきたのかなと思います。


それはあるかもしれないですね。自分はずっと競技スポーツをやってきて、大学でも監督が「チャンピオンスポーツ」と定義していたので、いわゆる「ファンラン」というのは自分の中に無かった概念なんです。スピリッツさんの企画で、2回ほどホノルルマラソンに参加したときに、これだけ沢山の人が走りにきているのは、本当に楽しいからなんだと思って。ずっと競技スポーツで走ってきた中には無い感覚だったので、新鮮でした。『かなたかける』の主人公達も、これから駅伝大会に向かっていきますが、やはり小学生なので「ファン」からスタートして、それを突き詰めていく中で自分の限界に向き合い、競技スポーツの世界を覗くようにしたい。最初から本格的なスポーツという形は、この主人公に関しては無いな、というところから入っています。


――[編]かなたちゃんを見ていると、最後までそうならない気もします(笑)。


最初がそういう形なので、逆に、競技スポーツに目覚めることで、本来の「ファン」的なものを見失ってしまうような展開は、当然ありえると思うんですけれど、担当編集の熊谷さんは走るのがあまり好きじゃない人なので、その感じはすごく勉強になります(笑)。自分は、競技や練習の中で、走っているときの気持ちよさとか、人間の身体がこんなにスピードを出せるんだという感覚を知っているんですよね。テレビで駅伝を観ているとあまり感じませんが、実際に沿道で応援すると「こんなに速いの?」というのは体感できると思います。こんなスピードで人間が街中を走るという非日常感を、誰でも自分なりのスピードで感じることができるというのを、どうにかして形にできないかと考えているところです。【その2へつづく】



『かなたかける』高橋しん氏インタビュー [その1][その2][その3]



(インタビュー/構成:平岩真輔)

【2016/01/ 1】

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