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岩井俊二監督作品を大胆にコミカライズ!道満晴明『花とアリス殺人事件』/アニメ評論家・藤津亮太のアニメな?マンガ【第1回】

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原作の映像化や、その逆のコミカライズなど、近年とても密な関係にある漫画と映像作品。でも、メディアが違えば表現方法やその内容も変わってくるもの。アニメ評論家・藤津亮太氏ならではの切り口で、アニメやドラマ、映画と関りの深い作品を紹介する漫画レビュー。観てから読むか? 読んでから観るか!? 第1回のレビュー作品はこちら......!



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『花とアリス殺人事件』漫画/道満晴明 原作/岩井俊二


 大胆不敵。独断専行。男子禁制。道満晴明。『花とアリス殺人事件』を端的に言い表すとそんな四字熟語が頭に浮かぶ。まあ、最後は著者の名前だから当然といえば当然ですが。
 本書は、岩井俊二監督によるアニメーション映画『花とアリス殺人事件』のコミカライズ。 本書は、岩井俊二監督によるアニメーション映画『花とアリス殺人事件』のコミカライズ――のはずだが、物語の大枠こそ同じものの、その内容はかなり違う。だから、表紙やタイトルにビビッときたら、映画を観ている観ていないに関らず手に取るのが吉!


 物語の大枠はこんな感じ。
 転校早々、クラスに不穏な雰囲気があることを知るアリス。実は、このクラスでは去年、殺人事件があったのだ。殺されたのは四人の"妻"がいたというユダ。アリスはその真相を探る過程で、ひきこもりの少女・花と出会う。果たして殺人事件の真相とは......。
 映画は、事件の真相を追うアリスとハナの周囲に実にさまざまな大人が登場する。アリスの母、アリスの離婚した父、バレエの先生、偶然出会ったサラリーマン。そんないろんな人の人生の中に、「花とアリス」というコンビの一瞬の輝き浮かび上がってくる。


 ところが、マンガ版はこういう大人のキャラクターは一切出てこない。思い切りがいいぐらいなし。岩井俊二原作と表紙にはあるけれど、事件のオチも含めた、この大胆なアレンジは著者の独断であろう。
 そのかわりにクローズアップされたのは、ユダを殺したという四人の"妻"。つまり、ユダと付き合っていたことのある同級生の女生徒たちのこと。アリスはこの"妻"たちを訪ねて「秘密の暗号(ナンバー)」を聞き出していく。この暗号は、四人がユダへの想いを永遠にするために埋めたタイムカプセルの鍵をあけるナンバーだった。


 女の子ばかりが次から次へと登場するこのマンガから浮かび上がるのは「女の子同士の間に流れる柔らかな雰囲気」。それは、友情とも恋愛とも違うし、切なさとも無縁。妻たちだけではなく、花もアリスも、それから殺人事件をアリスに教えた陸奥睦美もその雰囲気の中で生きている。ユダというキャラクターはまるで、この個性的な女の子たちをこの世界へ導くための"チケット"のような存在だ。
 映画版のようにロトスコープのリアルな動きでこのマンガの内容を表現したら、ちょっと生々しすぎるだろう。でも、道満晴明の体温低めの絵柄だから、この作品の温度感は絶妙にほどほどだ。作品世界の中にずっとふわふわと漂って、女の子たちの世界をずっと眺めていたくなるような、そんな温度感の一冊だ。



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『花とアリス殺人事件』漫画/道満晴明 原作/岩井俊二「やわらかスピリッツ」掲載

大ヒット映画『花とアリス』の前日譚を、『ニッケルオデオン』道満晴明氏がコミカライズ!
転校生のアリスは、クラスの不穏な雰囲気にとまどっていた。
このクラスでは去年、殺人事件があったという。
殺されたのはユダ。
事件の真相を調べるアリスは、当時を知る引きこもりのハナと出会う。
そして、"ユダの4人の妻"ひとりひとりのもとを訪れ、謎につつまれた殺人事件の核心へと近づいていく......
岩井俊二監督による初の長編アニメ映画『花とアリス殺人事件』を、『ニッケルオデオン』の道満晴明がわりと自由にコミカライズした異色作。
謎と友情の物語、そのマンガだけの結末をどうぞ見届けてください。



(文:藤津亮太)

1968年生まれ。静岡県出身。アニメ評論家。主な著書に『「アニメ評論家」宣言』、『チャンネルはいつもアニメゼロ年代アニメ時評』がある。各種カルチャーセンターでアニメの講座を担当するほか、毎月第一金曜に「アニメの門チャンネル」でアニメの楽しみ方を紹介するネット番組を行っている。


【2015/10/17】

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花とアリス殺人事件
道満晴明/岩井俊二

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