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心技体の充実で読者の心を掴むドラマ化! 松田奈緒子『重版出来!』/アニメ評論家・藤津亮太のアニメな?マンガ【第3回】

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原作の映像化や、その逆のコミカライズなど、近年とても密な関係にある漫画と映像作品。でも、メディアが違えば表現方法やその内容も変わってくるもの。アニメ評論家・藤津亮太氏ならではの切り口で、アニメやドラマ、映画と関りの深い作品を紹介する漫画レビュー。観てから読むか? 読んでから観るか!? 第3回のレビュー作品はこちら......!



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『重版出来!』松田奈緒子


 『重版出来!』のドラマが始まった。
 第1話は、原作1集の第一刷「黒沢心参上!」、第二刷「ドラゴン危機一髪!」を中心にした内容で、各所に今後の展開に繋がる描写もちりばめられて、原作ファンなら「おお」と思ったはず。原作を既読でも未読でも今後が気になる第1話だった。


 『重版出来!』は、マンガ雑誌「週刊バイブス」の新人編集者・黒沢心を主人公にした、マンガ編集者もの。マンガ家と編集者の仕事ぶりを丁寧に見せるだけではなく、出版社の営業、書店、印刷所など、マンガを取り巻くさまざまな立場の人の仕事にフォーカスをあてていくのが特徴だ。ドラマ放送開始に先立って発売された最新第7集でも、バイク便のドライバー、編集プロダクションに所属する契約の編集者とふつうなら取り上げられないようなポジションの人にスポットライトがあてられている。


 アスリートが見事なパフォーマンスを見せるには心技体の充実が欠かせないが、エンターテインメントにもそれはいえる。
 エンターテインメントにおける「体」とは、観客にその作品世界を信じてもらうためのリアリティ。そして「技」は、「伝えたいこと」をわかりやすく表現する「技術」。そして「心」は、「伝えたいこと」を形づくるために不可欠な感情。しかも、この3つはレーダーチャートのように独立しているのではなく、3つが渾然一体となって存在しているのだ。 『重版出来!』が魅力的なのも、この心技体が充実しているからだ。


 多彩なキャラクターたちの"いそう"な雰囲気、一歩間違うと優等生になりすぎてしまいそうな主人公・黒沢心の独特の存在感などから醸し出されるリアリティ。さまざまな仕事の内容を、説明的にならずドラマに落とし込んで見せていくわかりやすさ。
 そして、仕事があぶり出す人間の強さと弱さを描き出そうという姿勢。特に第7集では、黒沢が担当している新人マンガ家・中田の心の深部に触れる展開がでてきて、人間が作品を作り出すことの深淵を垣間見せる。
 『重版出来!』が読者の心をつかむ秘密はおそらくこの心技体がバランスにある。


 こうやって整理してみると、ドラマはマンガの持つ「体」の部分=リアリティを巧みに実写へと翻訳していることに気づかされる。たとえばマンガのキャラクターをマンガとドラマで並べて見ると、決してコスプレ的な意味でそっくりさんではない。でも、役者の身体を通じてでてくる存在感が似ているのだ。その「絵の登場人物がもし実体だったらこんな存在感になるはず」という見極めのうまさが、ドラマを浮ついたものにしていないのだ。



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『重版出来!』第1~7集絶賛発売中!



火曜ドラマ『重版出来!』放送中!!(TBS系/毎週火曜よる22時~)

舞台は、週刊コミック誌の編集部。
何者でもない人が「漫画家」になる。その才能を支える編集者たち。
彼らは、「一冊の漫画」という夢のために、ひたむきに全力で仕事に取り組んでいた。ひとつの「漫画」が人生を変えるんだ。それを多くの人に届けたい... その「漫画」を重版出来させたい...重版出来(じゅうはんしゅったい)・・・それは、初版と同じ版を使い、同じ判型、装丁にて刷りなおすこと。つまり、売れた漫画ということ。そこに足を踏み入れたのは、新米編集者・黒沢心。
「今の自分が、心から熱くなれる場所は、ここしかないと思いました!」
まっすぐな彼女の人間力と持ち前の勘は、やがて皆を動かしていく。

主人公の新米編集者・黒沢 心役には、連続ドラマ初主演の黒木 華。「週刊バイブス」の頼れる先輩・五百旗頭敬役にはオダギリジョー、コミック営業担当の小泉 純に"塩顔男子"の人気モデル・坂口健太郎、「週刊バイブス」の和田編集長に松重 豊など豪華な顔ぶれの他、脇を固めるキャストも個性的で注目度の高い役者陣が揃っています。

また、作中に小道具として登場する漫画原稿を、『白暮のクロニクル』ゆうきまさみ氏、『しあわせアフロ田中』のりつけ雅春氏をはじめとした漫画家諸氏が手がけているなど、漫画ファン必見のドラマです!!

→火曜ドラマ『重版出来!』|TBSテレビ



(文:藤津亮太)


1968年生まれ。静岡県出身。アニメ評論家。主な著書に『「アニメ評論家」宣言』、『チャンネルはいつもアニメゼロ年代アニメ時評』がある。各種カルチャーセンターでアニメの講座を担当するほか、毎月第一金曜に「アニメの門チャンネル」でアニメの楽しみ方を紹介するネット番組を行っている。(twitter:@fujitsuryota)

【2016/04/19】

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