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装丁から見るマンガの魅力!「ジャケ萌え!」8冊目/BALCOLONY. 染谷洋平さん 『GIGANT』その1

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みなさま、おひさしぶりです!

読むだけじゃない、見て触って嬉しい単行本。なんだかカッコイイ! 可愛い、きれい、オシャレ!そんなグッとくる「マンガの装丁」の魅力をお届けする連載企画「ジャケ萌え!」
装丁を見るだけで内容が気になってしまう、そんなたまらない"見た目"をしたおススメ単行本をピックアップし、見どころや舞台裏などを紹介していきます!

「もう更新されないし、連載終了したのかな......?」なんて思った方もいるかもしれません......が、まだまだ終わりません。《帰ってきたジャケ萌え!》をお届けします!



今回ピックアップしたのは、実写映画化・アニメ化もされた大ヒット作『GANTZ』『いぬやしき』に続く巨大SFボーイ・ミーツ・ガール『GIGANT』第1集(奥浩哉)。装丁を手がけたBALCOLONY.染谷洋平さんと一緒に、ロゴと装丁が完成するまでの過程を振り返っていきます。




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『GIGANT』

映画監督志望の男子高校生の零は、大ファンであるAV女優 パピコを中傷するビラが街中に貼られているのを目にする。ある夜、ビラを剥がして回っていると、背後から声をかけられた──「君が貼ったの?」。振り向くと、そこに立っていたのはパピコ。違うと答える零にパピコは......。予測不可能な男子高校生・ミーツ・AV女優SF巨編、開幕!!!!



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今度の主人公は映画監督志望の男子高校生。



メジャー映画感+純愛+SFの要素を伝えるロゴ


──編集者から「小学館で奥さんが連載するのは初だから新しいテイストに挑戦したい」と、染谷さんにロゴ制作と単行本デザインの依頼がきたそうですね。特に「メジャー感を出すこと」がキーワードだったとか。


そうですね。まず、編集の待永さんから僕に依頼が来た時は正直「え!? 僕でいいの!?」と思ったんですよ(笑)。 依頼するにあたって順当にいうなら別の方だろうって。僕は美少女系、美少年系、オタク系の漫画の装丁が多かったし、ビッグコミック系列とはお付き合いもなかったし......。でも、第1話を読ませてもらったら合点がいきました。すごくブロックバスター的というか、映画的なビジュアルを匂わせる表現の漫画ですよね。漫画を読んでない人でもわかる面白さがある。だからデザインもそれに合わせる必要があるだろうな、と。漫画装丁の文法を踏襲したものではなく、音楽や映画の中でもメジャー作品のテイストのニュアンスを入れつつ、漫画装丁の枠の中でやるハイブリッドなものがいいだろうと感じました。


──漫画のデザインだけでなく、音楽や映像など広い分野で活動しているBALCOLONY.さんの方向性とも合致していたんですね。


そうですね。映画的な匂いも感じさせつつ、漫画装丁としても受け取れるものを作ることを考えるのであれば、漫画以外の分野のものも作りつつ漫画装丁にも足を突っ込んでいる弊社はちょうど良かったのかもしれません(笑)。


──第1話を読んだ印象は?


とても奥さんらしいというか、もう、奥さんの漫画でしかない。それでいて非常に新鮮でした。誰がどう読んでも面白くて、すごくびっくりしますよね、この展開。第1集の先が気になって仕方ないし、漫画だけじゃなくあらゆるエンタテイメント、映画的な要素もふんだんに盛り込まれていて、奥さんの「面白ければ何でもアリ」な姿勢が垣間見えます。


──染谷さんにとって、漫画的な面白さと映画的な面白さの違いって何でしょうか?


体感的にですけど、やっぱり漫画っていうのは映画よりさらに気軽な大衆娯楽だし、週刊・月刊っていう短いスパンで読ませるもの。なので、セリフや擬音、説明書きや表情のデフォルメ、漫符などで可能な限り読みやすさやわかりやすさを担保することが一般的なのかなと。1ページ読んで、読み進める手を止めるのも読者の自由なので、なるべく短い時間で読者の心を離さない技術が重視されがちなのかなと思います。それに対して映画っていうのは2時間近く観客を強制的に拘束するもので、漫画ほどには短時間での分かりやすさやデフォルメ表現というものをつくり手に強要しないという気がしますね。
あと僕は編集者でも作家でもないので全部推測ですけれども、漫画って通常は、作家がやりたいことに対して週刊・月刊連載などの時間の縛りと、1話分の作画にかけられる手間の縛りがある。そうなると、ある程度デフォルメするとか、アシスタントと共有しやすいとか、効率化を踏まえた画づくりも考慮しないといけない。奥さんの漫画って、そういう都合をあんまり感じさせないですよね。漫画を描くっていうよりも、どこかで起こっている出来事をカメラで切り取って編集している。説明的なセリフやわかりやすいデフォルメ的な絵もあんまり使わない印象があります。



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──このカラーページも、リュック、スマホ画面、スクランブル交差点、人混みと......容赦無くリアルに描いていますよね。


本当にすごいですよ。背景は写真からトレースしているけれども、スクランブル交差点は実在の場所だからごまかしがきかない。このロングカットも、もうおかしいですよ、普通はもっと顔に寄っていきますよ!(笑)。そのほうが省エネだし。



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背景を広くとった構図で、あえて視線が向かう先をずらすことで何かの心象を描く。これって画力が高くないとなかなか描けないんじゃないですかね。奥さんの作品はセリフでの説明をあまりせず画面で表現しているのに、どんどん読み進められる。『GIGANT』も奥浩哉節がきいてますよね。



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トイレの中で巨大化するパピコ



あっ、このページも。住居のスケールの中で巨大化するのも描くのは大変なんじゃないかな。ビルの後ろから巨大化した女性がドン! じゃなくて、たぶんこれは3メートルくらいで、わりとリアリティのある大きさだから。


──現実感がある大きさですよね、ドアの高さがこれくらいだから、首はこう曲がるだろうとか。


この技術力をもって、巨大化したAV女優と男優が絡むネタをぶっこんで、なんでもないようにススッと読ませるのがたまらないですよね(笑)。 最高峰の技術で童貞がやれるかやれないかっていう話を描く。ファーストフード店に入ったらとてつもない技術を使ったしょうもないハンバーガーが出てきたみたいな。懐石料理やフレンチじゃない。僕が奥さんの作品の装丁をやるならたぶん高尚にしちゃいけないんです。



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「もう、こういう構図で描こうってのが狂気の沙汰ですよね」(染谷さん)



今回はデザイン作成に入るまでの経緯、『GIGANT』の魅力についてお聞きしました。
次の更新では、染谷さんが作成したロゴ案など「デザインの思考過程」を追っていきます!




ジャケ萌えMEMO
「ファーストフード店に入ったらとてつもない技術を使ったしょうもないハンバーガーが出てきたみたいな」はとても言い得て妙。高級料理店は入るのに敷居が高いけれど、ファーストフード店なら気軽に入れて、肩に力を入れず、気軽にサクッと食べられる。染谷さんも、奥さんも、何をもって/どんな風に読者に届けたいのかを考えているようでした。




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『GIGANT』第1集大好評発売中!!




「ジャケ萌え!」8冊目 [その1][その2][その3]



(ライター:川俣綾加)

フリーライター、福岡出身。デザイン・グラフィック/マンガ・アニメ関連の紙媒体・ウェブ、『マンガナイト』などで活動中。著書に『ビジュアルとキャッチで魅せるPOPの見本帳』、写真集『小雪の怒ってなどいない!!』 http://ayamata.jugem.jp/



「ジャケ萌え!」バックナンバー


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【2018/07/ 9】

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GIGANT 1
奥浩哉

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