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装丁から見るマンガの魅力!「ジャケ萌え!」8冊目/BALCOLONY. 染谷洋平さん 『GIGANT』その2

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読むだけじゃない、見て触って嬉しい単行本。なんだかカッコイイ! 可愛い、きれい、オシャレ!そんなグッとくる「マンガの装丁」の魅力をお届けする連載企画「ジャケ萌え!」。



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今回取り上げるのは、『GIGANT』第1集(奥浩哉)。装丁を手がけたBALCOLONY.染谷洋平さんと一緒に、装丁が完成するまでの過程を振り返っていきます。
[ジャケ萌え!8冊目 その1から読む]



どういう面白さがあるかわかりやすいものは迷わない


──染谷さんが作ったロゴ案を読んでいると、案を出しつつ自分でツッコミを入れているのが面白いなと感じました。


初めてお付き合いするお客さんに対しては特にそうなんですけど、セルフツッコミを入れて予防線をはってくんです(笑)。 こういう考え方やこういう切り口はあんな理由であんまり合わないよね、とか、「自分はこの深度まで考えたけどみなさんどう思いますか?」ってのを伝えるためです。


──1~2案だけ出すこともありますか?


顔なじみの編集者の場合はそうですね。初めてやりとりする方に対しては相手の方の求めるところを考慮しつつ慎重に進めています。



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染谷さんが作成したロゴ案......の、思考過程といえるもの。「あの映画っぽい」ロゴが並んでいる。
「宇宙人が出てきそう、銃撃戦してそう、ピエロが追いかけてきそう......など、みんながなんとなく覚えがあるものをリミックスしています」(染谷さん)



──この一覧にあるロゴは全部ボツ案なんですね。


実際に提出したデザイン案に対して、それにたどり着くまでにこういうことを考えましたよ、っていうのがこの一覧です。ロゴで匂わせたかったのは漫画というよりはメジャー映画的なスケールのエンタテイメント感、ボーイ・ミーツ・ガールやSFなど何でも許容できるフラット感、そして何より巨大化ですよね。まずはそれらの感じさせたい要素を個別にロゴに落とし込むとどうなるのか。既存の映画ロゴなどで近しいイメージの表現を借りてきて、どんな方向性のものがこの作品の要素にハマってくれるか試してみました。


2番のロゴ案のネタ元は「未知との遭遇」のポスターで、この感じはハマりがいいなと思っていて、巨大さと壮大さがありフラットで、かつSF感がある。4番になるとキャラが立ちすぎてしまう。2番をベースにブラッシュアップして、地平線の先にロゴがあるのをやってみると遠目に見た時に道の表現がロゴというよりは絵みたいに見えてしまって。文字と道路部分の図形の太さが合わなくて、引いてみた時にロゴとしてのまとまりがなさすぎる。



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次に、道路の表現に頼らずもっとシンプルに「未知との遭遇」感を出すため『GIGANT』のAを大きくして、SF要素も入れたいから鋭角に文字を切ってみました。でも、第1話を読んでも何が起こるかわからないほうがいいので、もっとSFから純愛からファンタジーから何から何まで起こっても許容できるようなフラットさが欲しくて、エッジの切れ込みをおさえていきました。


──ロゴ完成版に近い感じがしますが、まだ試行錯誤が続いていく......。


そうなんですよ。これをやったらにおいはとれたし、メジャー感もSF感もあるし、バトルと恋愛をしても許されるくらい薄味になったけど、今度は薄味になりすぎました。巨大さが伝わらない。
Aの部分に地上からライトがあたって影ができているとか色々な推理が捗るロゴになっていいんじゃないかと思ったものの、いかんせんAに見えない。それでAを読ませようとして影の付き方を上方向に変えてみたらロゴが縦長になりすぎて、雑誌連載での運用がきかない。そこで、地上からライトが当たって影が上に伸びているというのを諦めて、巨大な影が地面に落ちているという表現に変えたらすわりが良くて。



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ちゃんとAだと読めるし影だというのもわかる。これをベースにもうちょっとブラッシュアップを進めていきます。ちょっと話はそれますが、全世界的にメジャーな映画とかゲームのロゴって2000年代から薄味になっている気がするんですよ。80年代・90年代の「バック・トゥ・ザ・フューチャー」「インディ・ジョーンズ」のゴテゴテしたロゴから、「インターステラー」「ゼロ・グラビティ」のようなフラットでシンプルな表現のロゴになった。グローバル企業やグローバルブランドのロゴもそうですよね。
だから『GIGANT』でもメジャー感のトレンドを見据えると、文字打ちっ放しに近くて、Aだけに光が当たり影が落ちているものを出して、待永さんと奥さんからもOKをいただきました。最後にひとつだけ、もうちょっと太くしてほしいとのことだったので、もう一段階太くしています。そこから第1話の扉を作っています。



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これでほぼ完成。このあとカタカナのデザインに調整が入る



──染谷さんが進めるままバシバシ決まっていった感じがします。


『GIGANT』のように、どういう面白さがあるかわかりやすいものは迷わないですよ。たぶん他のデザイナーがやってもあんまり迷わないんじゃないですかね。奥さんの世界、奥さんのパワーがあるからデザイナーがそこにチューニングするだけです。



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ロゴ 完成版



細かな調整を何度も経て、ようやくロゴデザインがまとまりました。デザイン的にOKが出ても、誌面での運用を考え改めて調整し直してからの完成です。
次回は単行本本体・カバーまわりについて追っていきます!




ジャケ萌えMEMO
ロゴ案の下に書かれている解説は、すべて染谷さんが編集者に見せるために書いたものです。誰がどう見てもとてもわかりやすい! こう書かれていると、なぜ・どうしてそこに行き着いたか齟齬なく伝えられますね。




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『GIGANT』第1集大好評発売中!!




「ジャケ萌え!」8冊目 [その1][その2][その3]



(ライター:川俣綾加)

フリーライター、福岡出身。デザイン・グラフィック/マンガ・アニメ関連の紙媒体・ウェブ、『マンガナイト』などで活動中。著書に『ビジュアルとキャッチで魅せるPOPの見本帳』、写真集『小雪の怒ってなどいない!!』 http://ayamata.jugem.jp/



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【2018/07/11】

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GIGANT 1
奥浩哉

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