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ゆうきまさみ×おかざき真里×松田奈緒子「月刊!スピリッツ」6周年記念トークイベントレポート(その2)

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去る2015年9月17日から30日まで、神楽坂かもめブックス内ギャラリーにて開催された「月刊!スピリッツ」6周年記念原画展「まんが至上主義」。「月刊!スピリッツ」掲載作品の原画の数々が展示され、訪れた多くの漫画ファンの目を楽しませていました。


9月25日には、同店内で「月!スピ」6周年記念トークイベントが開催され、『でぃす×こみ』のゆうきまさみ氏、『阿・吽』のおかざき真里氏、『重版出来!』松田奈緒子氏という、『月刊!スピリッツ』の人気作品の作者3氏による豪華なトークイベントが行われ、漫画制作の舞台裏から編集者のぶっちゃけ話まで、濃密な漫画トークを繰り広げました。


コミスンでは、そのトークイベントの内容を独占レポート。会場の雰囲気たっぷりに全3回でお送りします!!



ゆうきまさみ×おかざき真里×松田奈緒子 トークイベント [その1] [その2] [その3]



その1からの続き》


スピリッツ稲垣(以下、稲): 深イイ質問でしたが、次は会場のみなさんも「ハテ?」と思われるのではないかという高度な質問をおかざきさんが図面で用意してくださいました。


おかざき真里(以下、お): ネーム中の頭の中の図です。ネームってずっと頭の中で考えてるじゃないですか。それを紙に描いてからも推敲するんですけれど、これでよし!と自分がジャッジする線引きはどこですか? 自分の中で、これで出していいという線を越えるのは。



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ゆうきまさみ(以下、ゆ): これはまた高度な質問ですね。


お: 特に、月刊連載は結構悩む時間があるので。時間がなければいいのに、まだ悩めちゃうなって。時間切れでなく自分で判断するのは......。


松田奈緒子(以下、松): 私はもう、物理的に最後を決めて、アシスタントさんを呼んでデッドを決めちゃうんですよ。ここまで絶対やらなきゃいけないというのを決めたら、それまでとにかく遊ぶ!


お: 遊ぶんだ!(笑)


松: 遊ぶ。なんにもしない。とにかく映画を観たり、本を読んでダラダラして、その間も頭は動いてると思うんですけれど、本当に尻に火がついて、もうやらなきゃ死ぬ!というところにきてやっと机につけるんですよ。あとはもう突っ走るというか。


お: でも、前にすごいポストイットプロットとか過程を見せてくれたじゃないですか。


松: あれが3日前です。ポストイットにエピソードを書いて貼って、そこからネームに起こしていくんですけれど、そのポストイットにこれはこうなった、ここでこうなるという形になるまでは手を放しておく。一切触らないで資料を読んだりしてます。


お: そこから一気にダーってやるの?


松: 経験上、私は触ってるとダメなタイプだと思うんです。だから、自分がフローの状態、脳みそがフワフワしてる状態じゃないと。


お: ニュートラルな状態で。できない、じゃないんだ。「遊ぶ」と「できた」しかないんだ......いい人生!


松: 単純でバカっていうのは、それがすごいいいことなんですけれど、ここでできる!と思い込んで、そこ目がけて走るという、それだけです。以上!(笑)


お: すごい勉強になります。


松: ゆうき先生はいま月刊と週刊と...


お: すごい仕事量だよ?


ゆ: 東村アキコさんと比べたら...(笑)。僕の場合は、物理的に担当さんがやってきて尻を蹴飛ばしてくれるので。ネームを作るときって、四角い石膏のブロックに彫刻刀を入れていくような感じで。


お: かっこいい!ダヴィンチが言った「中の人を早く出さないと死んでしまう」っていうやつね。


ゆ: そういうアレですね。でもダヴィンチじゃないので......。しかもですね、ノミが通らない箇所があるんですよ。そこで、ああどうしようかな、思い通りの物にならないなって感じになってゴロゴロしていると、担当がやってきて蹴飛ばすんですね。そうするとノミがアッていっちゃって、石膏がパカッと割れちゃうんですよ。


お: たいへん!割れちゃった!!(笑)


ゆ: 割れちゃったんで、そこから形を作っていくしかないな......というところから転がり始めるみたいな。「台無しだよ!」みたいな感じにはなるんだけど、しょうがないから粉々になったやつを水で練って......。


お: すごい、いい!(笑) もう一回やるよ!やればいいんだろ!って。


ゆ: 僕の場合はこういう感じですね。おかげさまでギリギリで仕事が。


お: じゃあ、毎週、アッどうしよう、粉々だよ!って。


ゆ: もちろん自分で間違って粉々にしたこともあるんですけどね。


松: それはどうやって回収するんですか。


ゆ: だいたい、もう一回始めたほうがいいですね。どうしてもここで詰まっちゃう!となったら、やり方を変えて頭からやっていくみたいな感じで。僕は全体を割り振って描くということができなくて。


お: 松田さんは全体割り振り型だね。


松: 四つに分けて考える。


ゆ: それができなくて、1ページ目から彫るようにしてネームをきっていくんですよ。


松: フィルムが流れるようになるまでやるってことですよね。それをバーっとネームに落としていく......それは時間かかるわ。


お: 頭の中で完全にできてから、ベロベロベロ...って吐き出すみたいに。


ゆ: それができたと思っていても、実はできていないことがあるんですよ。どうしてもある一か所でひっかかって、ここから進まないとか。そういう時は、もう担当さんに蹴飛ばしてもらうしかないかって。


お: 蹴飛ばす! できればハイヒールで蹴飛ばしてほしい!(笑)


稲: 編集として聞きたいんですけれど、できるできないの境目でどうしようってなっているタイミングで、いつまでも自分で抱えているくらいならお電話くれればいいのにって、私はよく思うんですけれど。


松: 解決しないからじゃない?


ゆ: そこですぐに電話しちゃうと、たぶん解決はしない。というか、作品が自分のものじゃなくなる感じがしてしまうと思うんですよ。多分、悩みきるところまでが自分のものみたいな。それで、にっちもさっちもいかなくなったら...という感じかな。



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共に『でぃす×こみ』『重版出来!』作品中で漫画家と編集者の関係を描くゆうき氏と松田氏



お: それはもう、呼ぶんじゃなくて、担当さんが「ちょっと寄ってみたから」みたいな感じで来てくれるのがベストなんですね。きっと。


ゆ: それができる編集さんというのは、相当ベテランじゃないと。いろいろな作家さんのタイミングは、わからないですよ。


松: コンビネーションもありますしね。


ゆ: スパッと、これがいいと言えるものでもないですけどね。


松: これは本当にいい質問でしたね。


稲: さあ、そしてトリを飾るゆうきさんの質問がこちらです。


松・お: じゃーん!


ゆ: 「取材の成果、資料の面白いところ、取捨の選択は?」......2人とも取材をしたり資料にあたらないとできない漫画を描かれているので、こういう質問を考えてみました。作品の後ろにぜったいに膨大な面白い話とかが転がっているはずなんですよ。それを漫画にするときにどうやって取捨していくかという。


稲: そうですね、取材した全部が作品の中にあるわけじゃないから......。


松: おかざき先生の『阿・吽』はどのくらい資料からもってこられるんですか? この間、四国行ってましたよね。


お: 四国に日帰りで行ってきました(笑)。歴史も漢字もすごい苦手で。最初の頃はぜんぜん何も知らなくて、すごく偉いお坊様に「空海かっこいいですよねー」みたいな感じで取材していて。それで小学校の頃に教科書でみた空海の写真がかっこよかったとか、そういう知識を出そうと思って「口から仏様が......」って。


ゆ: それは空也!(笑)


お: お坊様が、膝からガクッって。私、生まれて初めて男の人が膝から崩れ落ちるのをみました(笑)。知識がゼロどころかマイナスから始めて、一応、いまはいろんなお坊様から「OK、あれは勉強して描いてる」って。


ゆ: どうして空海を描く気になったの!?(笑)


お: ね!本当ですよ!!


松: 聞いてるんだよ!!


お: 私がデビューした時の最初の担当さんが、昔「ジャンプ」で『キン肉マン』と『聖闘士星矢』を作った方なんですよ。今はフリーになられてて、ある日ブラブラとやってきて全然関係ない話をしているときに、京都の方にお坊様で大学の先生をしている面白い人がいて、その人の監修で漫画を作れそうなんだよねっていうのを近況として聞いていたんですよ。帰る時になって、コートに手を通しながら「おかざきさんにどうかと思う」って言われて、「え?え?」みたいな。適当に世間話として聞いてたんですけど、なぜか一晩寝て起きたらメールで「先生、空海が描きたいです......!」って打っていたという。そこから怒涛の勉強ですよね(笑)。



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おかざき氏が明かす『阿・吽』連載開始の経緯に聞き入る客席



松: それは連載のどれくらい前だったんですか?


お: 1年以上前ですね。京都とか浅草の方にいってお寺をいろいろ回って。高野山にも2日いったんですけれど、2日間とも高野山大学で講義を受けていました。どちらかと言うと、監修してくれる方ありきの企画で、今も月に1回は京都に行くか、先方が東京に出張してきた時は講義を受けていますね。でも、取材って今はネットで拾おうと思えば何でも拾えちゃうじゃないですか。なので、私は「あの時に行った比叡山は超雨降ってたな」と思ったら、雨をザーッと降らせる感じとか、取材をしていて、あまり突っ込んでほしくないところを聞いて相手が言いよどむ瞬間があるんですけれど、そこを突くみたいな。取材対象者がペラペラ喋ってくれるものは、もうありますよね? なんとなく外には出せないけれど自分はこう思う、空海や最澄の研究者が、研究成果として出すものじゃなくて、あまり言えないけれどこう思うんだよね、みたいなものを突いていくのが面白いし、そこを拾っちゃう。意地悪だからね。


ゆ: でもそのほうが面白いと思う。


松: いろんな所に取材して、パンフレットに載っているようなことは話してくださるんですけれど、仕事をしている人は自分の家庭のこととか、本音を言ってくれることはあまりないので、そこをどう突いていくか。どうでもいい話や雑談のほうが拾えますよね。


お: 私とかだと、東京から高野山に行くと、どうして街まで降りるのに何時間もかかる、ほぼ山に閉じ込められてるみたいな場所ででずっと研究してるんだろうとか、そういうところがけっこう面白い。


松: あと、「これはぜったい描かないで!」ということが結構多くて、それがすごい面白いんですよ。


ゆ: たぶん、それが一番面白い!


松: でも、絶対描くなっていわれて、わかりましたーって。取捨選択の基準は、全然漫画に興味ない人が面白いと思ってくれるというのが一番大事。


お: 松田さんはすごく漫画が好きじゃないですか。漫画好きな自分がどうやって漫画に興味ない人が面白いだろうというのを?


松: うちの母とか、取材で会った方で漫画は一応読むけど、作家名まで覚えてないとかいう方たちをイメージして、どのくらいの言葉だったらストレスなく読めるかというのを手探りでやっていきます。マニアックな人からは物足りないといわれると思うんだけど、もっとマニアックなものを描いてらっしゃる漫画家さんもいるので、多くの方に興味を持ってもらって、入り口にしていただければいいなというのが基準ですね。


稲: ゆうき先生はどうなさっているんですか?


ゆ: 僕はあまり取材をしないし、資料も見ないから。ただ、漫画を描く過程でキャラクターを作るっていうのは面白いよね。この人はなんでこんなことを言うんだろう? みたいなところから、少年時代はこうだったんじゃないかとか、そういう部分を作っていくことで、漫画に血肉が通ってくるみたいなことはあります。


松: キャラクターの名前はすぐ出ますか?


ゆ: わりとすぐ出てくるかな......なんとなく、この人はこんな感じの苗字、というのが顔と一緒に。


松: たまに、ずれてくることがありませんか? 私、しまったと思うことが以前あって......。描いていて、最後までなんか納得いかない感じになって、「こうじゃなかったんだよ、熊埜御堂(くまのみどう)って苗字だったんだよ...」みたいな思いで。


ゆ: 松田さんの漫画には変わった苗字がいっぱいでてきますよね。


松: いっぱい溜めています。次はこれを使おうって。


ゆ: 僕はあまり変わった苗字は使わないかな......。『白暮のクロニクル』は、ちょっと変わった名前が多くて覚えにくいから、もう少し簡単にしてくれと、1回、担当さんに注意されました。


松: 按察使さんって、ネームで書くの大変ですよね。


ゆ: それはありますけどね。たとえば雪村なんていうのはちょっと考えて、担当さんがリストアップしてくれた苗字の中から出しましたけど。下の名前は、僕が「魁」にしようと決めてあったので、上は4文字にしようとかそうやって。



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キャラクターの命名について盛り上がるおかざき氏、ゆうき氏、松田氏



稲: キャラの名前を決めたくない作家さんには、考えてくれと言われることもあって。「なんでもいいし、自分で名前つけるの恥ずかしい」と言われるんですけれど、どうですか? するっと出るときと出ない時があるとか、最初に決めるか後から決めるとか。


松: 主人公とかはもちろん決めますけど、脇役はどういうふうに動くかわからないので、ほったらかしにしておいて、描いていて、この子結構しゃべってくれるなと思ったら命名します。


稲: なるほど、じゃあ最初はファジーに遊ばせておいて。画数とか考えるんですか?


松: 名前の画数までは考えないですけれど、作品のタイトルは一応、歌舞伎は奇数だと当たるというので、『重版出来!』も五文字になるように「!」つけました。


お: 漢字は1文字?


松: 漢字は一文字です。


お: 『阿・吽』は2文字だ......。


ゆ: 「・」(ナカグロ)が。


お: ナカグロが!よかった(笑)


ゆ: あと、僕の漫画だとありがちなんですけれど、悪人とか死んじゃう人の苗字はどうしようかなと考えることはあります。昔、『超人バロム・1』という特撮ドラマがあって、悪の帝王がドルゲっていうんですけど、小学校でドルゲ君という男の子が苛められたという話がありまして。そういうこともあるので、ちょっと考えちゃいますよね。


お: インスタント焼きそばのメーカーにも、うちの子と同じ名前なんですけどって電話がいっぱい来たって。


松: 悪役のときは、自分の苗字を違う漢字で書くとか、絶対存在しない名前にするとか、そんな感じですよね。


ゆ: 聞いた話なんですけれど、『デスノート』に出てくる名前は、ありそうもない苗字が多いですよね。そのへんは気をつけてるんだろうなって。 《その3へ続く》



ゆうきまさみ×おかざき真里×松田奈緒子 トークイベント [その1] [その2] [その3]



(取材・構成:コミスン編集チーム・平岩真輔/写真:ぺらねこ

【2015/11/ 3】

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でぃす×こみ 1
ゆうきまさみ

阿・吽 2
おかざき真里/阿吽社

重版出来! 6
松田奈緒子

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