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『あげくの果てのカノン』米代恭と『映像研には手を出すな!』大童澄瞳のトークイベント振り返り! 米代恭の新情報も!

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この結末はハッピーエンドなのか、それとも新たなバッドエンドのはじまりなのか......?夏に行われたトークイベントを振り返りつつ、米代恭氏の新情報をお届け!


月刊!スピリッツで連載された、「SF×不倫」という異色のラブストーリー『あげくの果てのカノン』が6月に発売された第5集で完結。高校時代の先輩・境宗介に対する主人公・高月かのんの、一途で、同時に病的な恋を描いてきた本作も、ついにひとつの結末にたどり着いた。



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が、発売直後からその結末について、「ハッピーエンドだ!」という声と「こ、これは......!?」という悲鳴のような声とで感想が分かれてきた。


そんな声を受けて、7月に青山ブックセンター本店にて開催されたのが「ハッピーエンド(もしくは地獄のはじまり)の作り方」というトークイベント。『あげくの果てのカノン』の作者である米代恭氏と、同じく月刊!スピリッツで『映像研には手を出すな!』を連載中の大童澄瞳氏が登場し、創作についての話に加え、『あげくの果てのカノン』の結末について語り合った。


ネタバレ全開のラストについてのトークも後半でレポートする。



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大童澄瞳氏(左)と米代恭氏(右)



////////// ご注意! //////////
記事中盤から、『あげくの果てのカノン』結末についてのネタバレがあります。






作風は対照的だけど、実は似たタイプ?の2人


長年の片思いが不倫という関係で結実したことで、幸福感と周囲の傷つく人たちへの気持ち、さらに先輩の変化といった状況に心を乱すかのんの姿を描く『あげくの果てのカノン』に対し、『映像研には手を出すな!』はアニメーション制作に情熱を燃やす3人の女子高生たちの一風変わった青春劇。作風はまるで違う2作品だが、実は作者のおふたりはプライベートでも交流があり、山菜採りなどに行ったこともある友だち同士とのこと。


そんなこともあって、今回のイベントも「出てくれない?」「いいよ」という感じで決まったという。


トークイベントではまずお互いの第一印象やデビューのきっかけの話題から。マンガ家の知人経由で出会ったふたりだが、大童氏について「あまりに絵がうまいし、ああいう設定ものは私には描けない」と思ったという米代氏に対し、大童氏の方も「(『カノン』は)感情の掘り下げがすごくて、自分のなかにもある、ダークな感情やイノセントなヤバい感情とシンクロしてしまって"読めない!"って思いました。読めないのに、月刊!スピリッツで一番ヤバいやつ」と語った。


お互いに「自分とは違う」と感じつつ、一方で似た部分も。たとえば、写真を撮るときはふたりとも妙にキメッキメのポーズを取ってしまうという。


「たぶん写真に写り慣れてなくて、どうしたらいいのかわからないんだと思います。ピースとかするのが恥ずかしくて」(大童)



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ピースより恥ずかしくないキメッキメのポーズ



作風やアプローチは異なっていても、人間としてのタイプは近いのかもしれない、と感じるやりとりだった。


そんな話題を経て、いよいよイベントは今回のテーマである『あげくの果てのカノン』の結末についての話題に。



ここからは作品のラストについてネタバレも躊躇せず行うので、未読の方はご注意を!




原稿が"落ちる"直前のタイミングで生まれた最終回


『あげくの果てのカノン』の最終話は、境や家族のいる東京を離れた10年後のかのんを描いている。境への恋心も色あせ、心穏やかな生活を送るようになっていたかのんだが、そこで偶然境と再会するところで物語は終わる。最後のモノローグは「恋がまた現れた。」だ。


実はこのラストが決まったのは本当にギリギリだったという。連載初期はイメージしていた結末もあったものの、連載のなかで物語の展開は次々と変わっていき、結末もまた違う方向へと変わっていった。最終回も大きな流れは決まっていたが、ラストシーンが固まったのは作画に入らなければならない日の4日前くらいだったそうだ。


イベント開始前に米代さんに聞いたところ、どうしても結末が決まらず、最終的に「ケーキ屋さん(かのんは最終話でケーキ屋さんで働くようになっている)の取材をしてみたら?」という話になり、そこからイメージを膨らませていったという。


「『ラ・ラ・ランド』みたいな"結ばれなかったけど、結ばれた未来もあったかもしれないね"って話の、もう一歩先をやりたかったんです。でも、なかなか盛り上がる形を思い付かなくて、ギリギリで思い付いたのがこのラストでした。実は最初は境と再会したかのんが出ていくところまで考えていたんです。でも、そこまで"結論"を描ききってしまっていいのか、という話になって、その先を読者に委ねるような形にしました」(米代)



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物語のはじまり、第2話の印象的なコマ



会場はハッピーエンド派がやや多め?


紆余曲折を経て生まれた『あげくの果てのカノン』のラスト。まず会場で「ハッピーエンドだと思ったか、バッドエンドと思ったか」を挙手でアンケートを採ってみると、ハッピーエンド派がやや多く、バッドエンドと捉える人は少なめだった。


具体的に聞いてみると、否定派からはこんな感想が寄せられた。


「10年なりという時間をかけて先輩から離れたのに、その時間は何だったのか。仮にふたりがいっしょになっても、どちらかが依存する関係になりそう」(イベント参加者)


実は連載完結時に編集部で漏れた感想も近いものだったという。校了の際原稿を見た編集長は「呪いだな」とつぶやいたそうだ。また、担当編集の金城氏も「30歳とかになるまでずっとひとりの人を好きでいるというのは呪いだと思う。本人はしんどいのでは」と語った。


逆にハッピーエンドと捉えた人からは次のような意見が。


「誰目線で見るかにもよると思うけれど、また恋が始まったのはかのん本人にとっては幸せなのではないか」(イベント参加者)


また、「呪い」という感想に対してはこんな意見もあった。


「ずっとひとりの人を好きでい続けるのは呪いかもしれないけど、私は呪いは不幸だと思わない。呪いを抱えたまま生きていくのは、人が持っていない幸福を手に入れることだと思う」(イベント参加者)


大童氏もハッピーエンド派のひとりだ。ラストを読んだときは「こんなんハッピーエンドにきまっとるやん」と感じていたという。


「人の恋愛とかどうでもいいというタイプなので、その人たちがめざしている幸せとは何かというところに注目して考えている。かのんの表情と先輩の表情、どういう振る舞いをするのかという部分だけを見ていくとあれはハッピーだって。そもそも僕は、かのんが先輩と一緒にいて周りを巻き込んできた間も、一度も不幸せだったことはないと思ってるんです」(大童)


大童氏は「あんまり「ハッピー!!」みたいなハッピーエンドって好きじゃない」と話しており、好きなハッピーエンドの映画でも『アイ・アム・レジェンド』といった王道ハッピーエンドとは少し違う作品を挙げている。ちなみに、さらには好きな作品としては『ディス・イズ・ジ・エンド』の名前も。ストーリーに関しては実際に見て確認してもらえればと思うが、大童氏的には「これはもう完全なハッピーエンド(笑)」という作品だという。


会場、壇上ともに受け止め方が分かれた『あげくの果てのカノン』のラスト。ハッピーエンド派もバッドエンド派も、お互いの意見を聞くなかで「なるほど」と思う部分はあったようだ。





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イベント入場者特典のコラボイラスト!



『あげくの果てのカノン』が問いかけるのは読み手の幸福観


では、米代氏自身はこのラストをどう捉えているのだろうか?


米代氏はハッピーエンド派、バッドエンド派それぞれの意見にともに「意図したとおり」であり、「読み取っていただいて嬉しい」と語っている。


「ズルい言い方ですけど、私、メリーバッドエンドっていうのをずっとやりたいと思っていたんです。当人たちは幸せでも周りは不幸とか、周りは幸せでも当人たちは不幸みたいな、ハッピーともバッドとも言えないもの。それができるのにはどうなんだろうっていうので落ち着いたのはあのラストなので、どっちでもありなんですよね。読む人によって(捉え方が)変わるようにはしたいと思っていたんです」(米代)


「読む人によって捉え方が変わる」。それはつまり、このラストで問いかけられているのは読み手の幸福観である、ということだ。


かのんの先輩への恋は制御不能である。かのんの意思を超え、理屈や倫理観も覆す。だからこそ、呪いと捉えられる。同時に打算も妥協も通じない、揺るぐことのない「真実の恋」と捉えることもできる。翻弄され、決して休まることがないのがかのんの恋であり、それが幸福か不幸かというのは、それぞれの幸福観にかかっている。



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第1話より



実はイベント前に行ったインタビューでは、90年代から00年代初頭にかけて連載された『ハッピー・マニア』(著・安野モヨコ)の話題も挙がった。幸福と恋の快楽に翻弄され続ける重田加代子(シゲカヨ)を描く『ハッピー・マニア』は、幸福とは何かを問う作品でもあった。『あげくの果てのカノン』は、10年代に『ハッピー・マニア』を継ぐ作品ではないか、という話をしたところ、米代氏自身も「途中からめちゃめちゃ『ハッピー・マニア』に影響されている」と明かした。


「4巻の途中あたりからすごく『ハッピー・マニア』になって(笑)。絵柄も近づいて、お話も"これは『ハッピー・マニア』過ぎる"みたいな感じで直したりしてました」(米代)


米代氏はかのんと彼女の幸福について「何を優先するかによる」とした上でこうまとめている。


「呪いというものを受け入れる状況にい続けるというのは幸せだと思うし、逆に体力の減少とかで先輩といるのが厳しくなってきたりしたとき、それでも好きで依存しちゃうとなったら、それはそれでツラいはず。そのときそのときの自分にとって何が幸せなのかなっていうのを、かのんには立ち止まって考えて欲しいかなと思っています」(米代)


なお、米代氏は現在次回作に向けて準備を進めているとのこと。『あげくの果てのカノン』を完結させた米代氏が、次回どんな作品を繰りだしてくるか、今から楽しみだ。




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米代恭『あげくの果てのカノン』全5巻、大反響発売中!


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大童澄瞳『映像研には手を出すな!』第1~3集も大好評発売中!


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米代恭氏 新情報!

1.『シン・浪費図鑑』(著/劇団雌猫)の表紙イラストを描き下ろし!


オタク女子たちの深いヒダを刺激して大きく話題となった『浪費図鑑』の第2弾! 「安室透」「HiGH&LOW」といった、2018年のオタクシーンを語るに外せないトピックはもちろん、「フィギュアスケート」「宝塚」「ジャニーズ」...果ては「美容整形」まで、今回もディープなジャンルを網羅。前回よりもさらに熱く、深い内容でお届け!


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2.『まんが浪費図鑑』(著/劇団雌猫、まんが/朝陽昇)にゲスト寄稿!


SNS騒然の完全匿名エッセイ集『浪費図鑑』、待望のコミカライズ! それぞれの推しへ〈浪費〉という名の〈愛〉を叫ぶ作品集! キャラ原案を劇団雌猫が新たに書き下ろし、実力派漫画家・朝陽昇氏が描く本編5作品に加え、ゲスト作家に、ひうらさとる氏・原田楽氏、そして米代恭氏も「観劇で浪費する女」を寄稿!



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『浪費図鑑』シリーズ2作品、ともに10月17日発売です!



(文:小林聖)

【2018/10/17】

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